2017-07-06 No.195
干からびたエゾサンショウウオの卵
どうも、モーリーです。
前回のつづき記事です。
前回記事
Breath of the wild 2016年洪水跡をゆく@戸蔦別川
2016年8月に日本を襲った台風は北海道十勝でも猛威を振るい堤防を決壊させ、住宅や農地に浸水し、道路の寸断や橋の崩落を引き起こしました。
今回は台風の爪痕が残る北海道十勝の戸蔦別川の洪水跡の生き物の生息の様子を紹介します。
エゾサンショウウオに絞って生息の様子を紹介します。
[2017.5.20北海道十勝 戸蔦別川 林道上で干からびていたエゾサンショウウオの卵]
戸蔦別川の林道を歩いているとエゾサンショウウオの卵塊が干からびていました。
「これは一大事！」と思い、水域まで運ぶことにしました。
[エゾサンショウウオ 卵塊 アキタブキの葉に包んで水域まで運ぶことに]
[エゾサンショウウオ 卵塊 近くの水域まで運んだが、卵の中の黒い核の部分がほとんど白濁していた。死滅していると思われる]
エゾサンショウウオの卵は、流れの無いや緩い場所を産卵場所に好みます。
ですので水が蒸発し干からび気味の卵を、近くの水が干上がらない水たまりまで運びました。
しかし、卵の中の黒い核の部分がすでに白濁しており、すでに手遅れでした。
せめて水の中にお帰り… 君たちの生きる場所は水の中だったんだ…
サンショウウオの楽園
[北海道十勝 戸蔦別川 洪水後の様子 至るところにこのような小さな水たまりや新しい小水路ができている]
2016年の戸蔦別川の洪水跡には上記画像のような水たまりや小水路ができ、林道の寸断で人の行き来も激減し、自然度は上がったといえます。
川の氾濫により、堤防や砂防ダム、護岸ブロックなどの構造物を破壊することもあり、大変な状況です。
一方で、氾濫によって新たな水域の創出、河畔林（川の周りの林）に覆われていた場所が礫（れき）河原や草原といった環境に改変され、より多様な生物の生息環境になるケースもあります。
このように洪水や浸水によって環境が変化することを『攪乱（かくらん）』といいます。
河畔林が多いと環境的にも好ましいと思われがちですが、川周辺の環境には『河畔林』も『河原』も『草原』も『湿地』も必要です。
河畔林に依存する生物だけではなく、河原や草原、湿地を好む生物がいるからです。
昨年の洪水による攪乱で、そのような環境が創出され、それらの生物の生息環境が増えました。
悪いことばかりではないのだと知っていただければと思います。
エゾサンショウウオの卵と幼生
[北海道十勝 エゾサンショウウオの卵 螺旋形をしている。枝などに括り付けられ、流されない様になっているものもある]
[北海道十勝 エゾサンショウウオの卵 卵にトビケラが取りついている]
[北海道十勝 エゾサンショウウオの卵と幼生 多くの核が幼生の形にまで成長している。一部は幼生となり、卵から孵っている]
エゾサンショウウオの卵が成長し、一部は孵り幼生となっている。
エゾサンショウウオの産卵には、水辺が必要です。
昨年の洪水により戸蔦別川で攪乱が起き、エゾサンショウウオの産卵場所が増えました。
エゾサンショウウオにとっては、昨年の洪水は嬉しい結果になったのかもしれません。
2017年7月5日、一部の九州地方では観測史上最大の大雨が降りました。
堤防の決壊や浸水の恐れがある地域の方は、恥ずかしがらず、面倒くさがらずに近くの避難所に避難してください。
2016年北海道の洪水の時は、川近くの住民は多くが小学生や中学高に避難していました。
安全第一でお過ごしください。
したっけぃ
