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ハンター日記

事故記録 2025年8月北海道羅臼岳ヒグマ襲撃事件3 ヒグマの夏の主食はアリ(蟻)

投稿日:2025-09-02 更新日:

2025-09-02 No.1187

どうも、北海道十勝のハンターモーリーです。

2025年8月14日に北海道知床の羅臼岳において男性がヒグマに襲撃を受け死亡する事件がありました。

 

関連記事:
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襲撃の要因と原因と

知床では過去に猟師や飼い犬がヒグマに襲われる事件はありましたが、観光客が襲撃を受けた事例はここ30年以上の間では初。

世界自然遺産である知床において、「観光客」と「自治体」、「ヒグマ」の関係性のあり方が問われる事件が発生してしまいました。

私個人はこの襲撃事件は羅臼岳を走って登山していた、いわゆるトレイルランニングが事件を誘発した要因の一つではないのかと考えています。

また、事件誘発の遠因は恒常的な観光客からの餌やりによる人への警戒心の薄さなどもあげられるのかもしれません。

事件の原因は一つには絞れないものの、今回はトレイルランニングによる子育て中の母ヒグマと子グマたちへの急な接近により、母クマへの動揺を誘発したのではなのかと。

知床財団の調査速報2においても以下の記述があります。

 

2025年羅臼岳登山道におけるヒグマ人身事故に関する調査速報(第2報)

 

「被害者は同行者から離れ、先行して単独で走って移動していた可能性が高い

同行者との距離や被害者の移動速度などは不詳であるが、登山全体の行程から類推してもかなり早いペースで下山していたと推定される。

第2報追記:事故発生時の被害者と同行者の距離は200m程度と推定される。

なお、被害者は当日、いわゆる「トレイルランニング」と呼ばれるスタイルで登山していたという情報はない。」

 

わざわざ、この記述を記す目的は知床財団も「トレイルライング」的な相当早いペースで登山していたことが事件を誘発した一因と考えているのだと思います。

なお、知床財団によるとこの調査速報においては「同事件の事実関係の整理と迅速な公表を目的としており、事故原因の特定や検証を目的としていない」と明記しています。

なぜヒグマが突然山中の観光客を襲撃したのか、今後知床においてヒグマ対策事業を行政から請け負っている知床財団が中心になって検証されることと思います。

世界自然遺産である知床での事件であり、事件から2週以上経過した現在も知床連山への入山規制が解かれていないことから、早急な原因究明と対策提案が待たれます。

 




 

夏のヒグマの主食はアリ(蟻)

サルナシ コクワ

[北海道十勝 秋になりヒグマが好んで食す食材のひとつサルナシ(コクワ) アリの写真がないので代用]

つらつらと書いてしまいましたが、今回の記事の主題は

「ヒグマ」と「アリ」

の関係についてです。

 

2025年羅臼岳登山道におけるヒグマ人身事故に関する調査速報(第2報)

上記報告書においても、同事件の被害者は襲われた付近にはアリの巣が多数あり、そこでアリの巣を狙いアリを捕食していた母ヒグマが登山客を襲ったと読み取れます。

以下に該当部分を引用します。

560m岩峰付近は、夏季にはヒグマのエサとなるアリが恒常的に発生する場所であり、アリの摂食を目的としたヒグマの出没が多発する場所として知られている。

8月15日の現地捜索時、および8/20の事故調査時においても多量のアリの発生を確認している。

引用:2025年羅臼岳登山道におけるヒグマ人身事故に関する調査速報(第2報)2P 2. 事故現場の環境と発生時の状況 事故現場の環境より

 

なぜアリを狙っていた母ヒグマが登山客を襲ったのでしょうか。

 

さて、あまり知られていませんが、ヒグマの夏の主食は「アリ」です。

以下の動画は私が以前、知床の岩尾別付近で撮影した動画です。

ヒグマがアリの巣穴を荒々しく掘っている様子が撮影しています。

人を警戒せず、岩尾別で撮影されていることから、ひょっとしたら今回事件の個体なのかもしれないと思いました。

よろしければご覧ください。

 

上記動画内ではヒグマがすごい勢いで土を掘っている様子が確認できます。

エサの少ない夏シーズンは「アリ」の巣を狙い食べ、飢えをしのいでいます。

一時話題になったOSO18も牛を狙ったのは7月から8月上旬の頃でした。

牛を狙わないにしても、畑のデントコーンなどが大きな被害を受ける時期も7月から8月が多いです。

このようにエサの少ない夏の期間をいかにしのぐかが、ヒグマにとっての毎年の大きな問題です。

やがて、8月末になるとサケが遡上しイクラを食したり、ヤマブドウやコクワ、ドングリ、クルミなどの山の幸を食すことができるようになります。

そうなると、ヒグマは山に帰り、人里からやや距離を保てるようになります。

参考サイト:
ヒグマ研究室 ヒグマの食べ物

 

このようにヒグマはエサの少ない夏季をアリなどを食し耐え忍び、実りの秋を待っています。

今回の母ヒグマは二頭の子育てをしながらアリを探し食べていたら、突然ヒトが走って近づいてきたら驚いてしまったのかなと。

かなしい、出会い頭の事件だったのかもしれません。

改めてご冥福をお祈り申し上げます。

 

したっけぃ




 

  • この記事を書いた人

モーリー

2015年から北海道で狩猟開始。元は東京でアニメーターとしてジブリ作品やガンダムシリーズに参加していたが帰郷。現在は有害鳥獣対策や環境調査などに従事している。ブログは狩猟を軸に、自然と人の折り合いのつけ方、人生における本質的な豊かさの模索をテーマにしています。

-ヒグマ, 事件記録
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