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ハンター日記

事故記録 2022年8月別海町酪農家による猟師銃撃事件 事件概要と論点 8/27追記

更新日:

2022-08-21 No.975

どうも、北海道十勝のハンターモーリーです。

北海道別海町において空気銃により人が撃たれる事件が発生しました。
この事件、当初は時折発生する誤射事故だと思っていました。
「まぁ、時折発生する事故だなぁ。他山の石とする事故ですな。」的な印象でした。

しかし、同事件を調べるとこの事件めちゃくちゃです。
猟銃を所持したばかりの猟師が、猟銃等所持許可を持っていない酪農家に頭を撃たれたという事件です。
調べてみると撃った方も撃たれた方も法律違反をしています。

色々な論点がある事件なので事件概要と事件の論点を整理し、気になることを記します。

 




 

 

事件概要

日時

2022年8月15日8時19分

 

場所

北海道別海町中春別

 

関連サイト:
別海町

内容

2022年8月15日北海道別海町の牧場が現場。
猟銃所持許可を持っていない酪農業を営む38歳男性容疑者のFが作業小屋内から隣接建物の屋根のカラスを駆除するため空気銃を発砲。
同牧場の従業員で猟銃所持許可を持っている男性21歳Mが左方から歩いて来たため、Fが撃った弾がMの右側頭部に命中。
使われた空気銃は撃たれたMが所持する空気銃であった。
Mは頭から血を流しその場に倒れドクターヘリで病院へ搬送。
Mは金属製の弾(6mmほどの鉛弾)を摘出する手術を受けるも昏睡状態へ。

容疑者Fは翌16日17時に重過失傷害で中標津署により逮捕された。
容疑者Fは「カラスのことばかり考えていた」と話す。

 

2022年8月27日追記

未確認情報ですが、Mの意識が回復したとの情報が入りましたので記載しておきます。
意識が回復したのならば、事情聴取も捗るでしょう。

また、Fが射撃した際は立ち膝の状態であったことも未確認情報ながら入ってきましたので記載します。

 




 

 

事件論点

空気銃の弾

[空気銃の弾 ペレットと呼んでいます 大きさはBB段サイズ 鉛製が多い]

参考までに、上記画像が空気銃の弾です。
ペレットと呼ばれています。
大きさはBB弾サイズで、小さく軽いものです。
空気銃では空気圧を持って発砲しています。
ハトやヒヨドリなどの軽い獲物を獲るための銃です。
最近は性能も威力もあがり、空気銃で大型動物のイノシシやシカを獲る猟師もいるようです。
私のポンコツ空気銃ではヒヨドリやハトが精一杯ですね。

関連記事:
空気銃 おすすめはプリチャージ式空気銃 ポンプ式は愛すべき骨董品

 

話は事件に戻りまして、以下に事件の論点を箇条書きします。

 

容疑者Fの論点

・そもそもFは猟銃所持許可を持っていない
・猟銃等所持許可を持っていない人間は猟銃に触れることすらできない。というか、私たち猟銃等所持許可を受けた者であっても他の人の猟銃に触れることは原則できません
・なぜ猟銃所持許可を持っていない容疑者Fが撃たれたMが所持する空気銃を手に持ち、弾を込め、引き金を引けたのか
・他人の猟銃に手を触れ、弾を込め、発砲したことは明確な銃刀法違反
・カラスを狙ったというがMの頭部に弾が当たっている事実
・FとMの間のいざこざや確執の有無

上記にFについて気になった点を箇条書きしました。

 

撃たれたMの論点

・事件で使われた空気銃はMが8月4日に入手したばかりのものだった
・そもそもMが牧場に空気銃を持ってこなければ事件は発生していない
・もしくはMは同牧場で住み込みだったのか
・Mが8月4日に空気銃を入手したばかりということはカラス等の駆除の資格を持っていなかったことになる
※猟友会にもよるが、駆除の参加資格は猟銃所持許可を経てから3年程度は持てない地域が多い
・別海町の猟期は10月1日から始まる予定のはずであることから、8月に銃ロッカーから猟銃を出す理由がない(駆除資格がないのでカラスの駆除もできない)
・撃たれたMは猟銃等の保管責任及び携帯・運搬についての法律を犯している(銃刀法第10条1項・4項・5項)

 

 

論点整理

猟銃等所持許可を持っていない容疑者Fがなぜ空気銃を持ち、弾を込め、発砲したのか

これについては恐らくですが、従業員Mが8月4日に空気銃を手に入れたので、撃ってみたかったのかなと推測します。
当然Mも自分の空気銃をFに触らせてはいけないのですが、上司の命令で断れなかったのでしょうか。
正直、FもMもいい加減すぎます。

そして、Fが自分の牧場のカラスを駆除するために、なぜ自分で猟銃等所持許可を取らないのか?という疑問が浮かびます。
銃が嫌いな人は銃に触ることすら嫌がるものです。
Fが猟銃等所持許可を取らないのは、家族の反対であったり、過去に事件などを起こして所持許可が取れないからかもしれません。
従業員の空気銃を使って発砲するあたり、普段の素行が気になる方ではあります。

なお、北海道ではカラスやキツネ、エゾシカやヒグマの駆除のために農家や酪農家自ら猟銃等所持許可をとる方も多いものです。

また、カラスの駆除は牛舎にとっては大切な行為です。
カラスは牛の怪我した部分をつついて怪我を悪化させたり、生まれたばかりの牛の胎盤を食べたりと牛に悪さをします。
ですので、私も猟友会の仕事でカラスのパトロールなどは定期的に出動しています。

 

撃たれたMは駆除の資格を持っていないのに、なぜ空気銃を保管すべき銃ロッカーからだして牧場に持ってきていたのか

一番の問題はなぜ空気銃の所持者のMが空気銃を牧場に持って来たのか、という点です。
Mが空気銃を牧場に持ってこなければ、この事件は発生していません。

それとも、Mは同牧場に住み込みで働いている方だったのでしょうか。
それにしても、猟銃を銃ロッカーから引っ張り出す理由にはなりません。

駆除資格を有していないMがこの時期に空気銃を外に持ち出せる理由は4つだけです。

1.標的射撃練習のため射撃場へ移動中
2.修理のため銃砲店へ持ち込むための運搬中
3.保管委託のため銃砲店等に持ち込む運搬中
4.引っ越しの最中

この点に関しては警察が調べていますので、今後の報道を待ちたいと思います。
といっても、Mは昏睡状態なので容疑者Fとその家族の供述のみの情報ですが。

 

Fが狙ったとされる建物の屋根にいたカラスを狙ったのに、なぜ平地を歩いていたMの頭に弾が当たったのか

空気銃のペレット

[空気銃の弾 ペレット 一発10円以下 5mmや5.5mmサイズのものが多い]

なぜMの頭に弾が当たったのか?

報道によるとFは屋根にいるカラスを狙ったら、2-3m先を左側から歩いてきたMの頭の右側に当たったとのこと。
屋根は上方にあるので、仰角があるはずです。
本当に屋根の上のカラスを狙っていたのならば、2-3m先の平地にいるMの頭に当たるはずがありません。

それにカラスは猟銃を持っている人の姿を確認するとすぐに飛んでいなくなってしまうものです。
カラスは猟銃を認識していますので。
Fが猟銃を手にした瞬間にカラスは飛んでいなくなっていたのではないかと思うのですが、そうするとFは何を狙ったのか?という疑問が沸いてきます。

暴発か誤射だとは思いますが、日ごろのFとMの関係性も重要な捜査項目となるでしょう。
牧場経営者と従業員の関係が良好だったのか険悪だったのか。

 

2022年8月27日追記

・Fは射撃の際に地面に立ち膝の体制だった

立ち膝でスコープを除いていたら、Mの位置を認識していなかった可能性が高いです。
Mが射線上に移動してしまった可能性がでてきました。
空気銃を撃ったFも射線上にいたMも迂闊過ぎます。

 

 

8月4日にMが空気銃を所持したこと

上でも書きましたが、撃たれたMは8月4日に空気銃を所持したとされています。
そして8月15日に自分の銃をFに使われてその空気銃で撃たれています。

Mがなぜ、誰の影響で、いつ猟銃を持つ決心をしたのか?

M自身の強い意志で猟銃を取得したのならば、Fに猟銃を触らせることはしないと思います。
貴方も自身の大切なものを他人に簡単に触らせたりしませんよね。

猟銃を取得するにはおおよそ半年ほどかかります。
タイミングが良ければ3か月ほどで取得できる時もあります。
その間に筆記試験だったり、精神科医の診断だったり、近所や職場への警察による聞き込みだったりと、猟銃を所持するまでの工程は結構大変なものです。
まして、21歳の青年ではより大変だったと思います。

なんとなくですが、Mの猟銃の取得にはFの意志が働いているような気もします。

もしくは...、事件が発生したのは別海町。
今、道東を騒がせている巨大ヒグマOSO18が出現するのは30kmほど隣の標茶町。
空気銃ではOSO18は獲れませんが、中標津町や標茶町の酪農家たちもOSO18の出現で猟銃で自らを防衛する意識が強くなってきているのかもしれません。

OSO18の存在がMに猟銃をとらせたのかもしれません。

関連記事:
事故記録 コードネーム"OSO18"の衝撃 巨躯で強く賢く忍者のように闇に潜むヒグマ

 

 

空気銃は鉛弾

同事件を扱うヤフーニュースのコメントやSNS等において、北海道では鉛弾の所持は禁止されているのでこの事件はその意味でも法律違反している、という意見が散見されました。
が、それは違います。

空気銃で使用する弾は、以前のまま鉛製の弾が今も使用されています。
空気銃の弾は鉛弾規制の対象にはなっていません。

以下は鉛弾を規制する条文です。
分かり難い文章ですが「ライフル銃や散弾銃においては鉛弾を規制しますよ」という文章です。
散弾銃にあっても直径7mm以下の散弾なら鉛玉でも大丈夫だよ、と言っています。

空気銃の弾については鉛規制について触れていないのです。

規制対象となる特定鉛弾はエゾシカの捕獲に使用できる猟銃用の実包であって、その弾丸部分が鉛を含む物質でつくられているもの。
ただし、次の実包は除きます。
・鉛を含む物質で作られているライフル弾
・鉛を含む物質で作られている粒径が7mm以上の散弾

参考サイト:
北海道 鉛弾の所持の禁止について

 




 

牛舎が心配

ホルスタイン

[北海道十勝 乳牛ホルスタイン 好奇心が強く可愛い 舌がザラザラしている]

この事件で気になることがあります。
働きざかりの38歳の酪農家とその21歳の従業員がいなくなったことで牛が心配です。
残されたFファームの家族(奥様、Fのご両親、お子様3名)にとても負担がかかっているはずです。

私は牛飼いの孫なので、牛舎の管理運営が気になってしまいます。

牛飼いの仕事は多岐に渡ります。
朝晩の牛のえさやりから乳しぼり、寝藁敷き、エサの準備、8月なら牧草の刈入れ、たい肥を肥料にする工程、尿を畑に散布、乳房炎の牛の手当、出産の立ち合い、子牛の世話、ヘルパーさんの手配。
牛へのエサも出産前後などで一頭一頭違いますし、常に牛の状態を把握する必要があります。
容疑者となっていますがFがいなくなって牛舎が本当に大変だと思います。
いきなり知らない人が牛舎に働きに行っても、神経質な牛は乳量を減らします。
ヘルパーさんも臨時で雇うとなると結構なお金がかかります。
そもそも、急に対応できるヘルパーさんもいないかもしれません。

 

F本人が自供しているように、猟銃等所持許可を持っていないFが発砲し従業員に重症を負わせたことは重い罪です。
一方で牧場の重要な働き手を突然失い、残された牧場の家族が大変な状況であることが容易に想像できます。

 

容疑者Fは2019年10月にはBS日テレ「心の絆!三世代家族スペシャル2019」にもテレビ出演するなど、地元でも有名な牧場経営をされていたようです。
牛も300頭以上飼育しているとのことでかなり大きな牧場です。
そうなると、本当に牛舎運営が心配です。

 

今回の事件を受けて容疑者Fを非難する声が散見されます。
確かに容疑者Fの軽率で重大な行為は刑罰に値する重罪です。

 

しかし、私たちが美味しい牛乳や牛肉を飲み食べられるのは酪農家の方々のお陰です。

『罪を憎んで人を憎まず』

若いM氏の一日でも早い回復を願います。
そして、もしFに悪意が無く、あくまでも誤射や暴発による事件であったならば、容疑者Fの一日も早い酪農家としてのカムバックを期待します。

 

したっけぃ

  • この記事を書いた人

モーリー

東京からUターンして、2015年から北海道で狩猟しています。趣味は旅、料理、読書、アニメなど。仕事は元絵描きで環境調査、インバウンドなど。 ブログは狩猟を軸に、自然と人の折り合いのつけ方、本質的な豊かさの模索をテーマにしています。

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