2021-12-18 No.914
どうも、北海道十勝のハンターモーリーです。
北海道砂川市においてヒグマを駆除した猟師が猟銃所持許可が公安委員会と警察署によって取り消される事件がありました。
ヒグマの駆除は2018年8月、公安委員会と警察署による所持取消処分と処分取消を訴える裁判は2019年に始まり、判決が出たのは2021年12月と足掛け4年にわたる長い事件となりました。
私はこの事件を【北海道砂川市猟銃所持許可取消事件】と呼んでいます。
当初この事件は公安委員会と警察署の猟師への無理解による処分だと思っていました。
そのようなスタンスで事件を整理してブログを更新すると、所持取消処分を受けた猟師と共にヒグマ駆除に参加した猟師と名乗る人物からブログの問い合わせに連絡がきました。
「モーリーのブログ内容は間違っている!」と。
「こんなへっぽこ猟師のブログを読んでくれる猟師がいるのだなと感謝しつつも、なんか面倒くさいなぁ」と懐疑的に思いましたが、連絡先を交換し電話で話を聞きました。
その人物は北海道猟友会砂川支部の砂川部会長も担っていた人物でしたが、北海道猟友会をすでに追われていました。
そして、報道にはなっていない背景も浮かびあがってきました。
直接会って話を聞くべきかもしれないと思い、砂川市の事件現場で話を聞くことになりました。
その辺りは以下の記事に記していますので、よろしければご覧ください。
関連記事:
【事故記録】2018.8北海道砂川市猟銃所持許可取り消し事件 その1 そして裁判へ
【事故記録】2018.8北海道砂川市猟銃所持許可取り消し事件 その2 当事者インタビュー
【事故記録】2018.8北海道砂川市猟銃所持許可取り消し事件 その3 砂川市駆除現場にて
【事故記録】2018.8北海道砂川市猟銃所持許可取り消し事件 その4 裁判が始まる
【事故記録】2018.8北海道砂川市猟銃所持許可取り消し事件 その5 裁判は珍しい展開へ
【事故記録】2018.8北海道砂川市猟銃所持許可取り消し事件 その6 判決前夜
そして、2021年12月17日、札幌地方裁判所において判決の傍聴に行ってきました。
見てきたことや思うことを記したいと思います。
判決の時
注目されている事件のようで、裁判所前には複数の報道陣もおり原告が雪の中を歩いて裁判所にやってくる様子をドラマのように撮影していました。
こういうシーンもやらせというか、つくり込みなんだなと、報道の姿勢にやや呆れます。
私は以前から裁判傍聴を趣味としています。ですので、裁判傍聴は慣れています。
今回は初めて傍聴するにあたり入室のためのチケットが必要な傍聴でした。
人数制限が28名だったので、時間ギリギリに裁判所についた私は滑り込みのセーフ。
今回は注目される事件のため報道陣や関係者や一般の傍聴人も多かったです。
判決の言い渡しは、10時になるとすぐに始まりました。
判決内容
「公安委員会及び砂川警察署の猟銃所持取消処分を撤回すること。」
と原告の意見が全面的に認められた内容でした。
裁判の判決は始まってから裁判長が判決を言い渡し席を立つまで、20秒ほどで終わる短いケースもありますが、今回は判決後に裁判長が事件を総括するコメントが3分ほどありました。
短いコメントを残す裁判はありますが、ここまで長いコメントを残す事例は珍しいと思います。
メモを取っていなかったので、記憶からおおよその内容を箇条書きします。
なお、裁判では録音録画は禁止されておりメモ書きは認められています。
・原告が発砲した方向には近しい距離に数件の民家があったが、山の上にあり、屋根の一部が見えるだけであった
・臨場した警察官や市役所職員による発砲の事前周知はなされていた
・原告はスコープで立ち上がったヒグマを目視してから発砲した
・背後に民家があり一部その姿が見えていたとしても、バックストップとなる斜面があり、スコープでヒグマを目視していたことから、発砲は安全な管理のもと行われた
・よって、北海道公安委員会及び砂川警察署の猟銃所持取消処分は不当な処置であり、その処置を撤回する
おおよそ、上記のような内容でした。
まずは、長い裁判を戦い抜き勝利した原告に敬意を払います。
おめでとうございます。
戦う男の姿勢を見せていただいた気もしています。
また、今回の判決も裁判の争点となった原告の発砲が安全管理上適切に行われた発砲であり、公安委員会及び警察の措置は不適切であると判決した裁判長の判断もある程度妥当だと思っています。
ただし、この裁判長もこの事件は単純な猟銃所持取消処分であるだけではなく、事件の裏があることを知っているなと裁判長のコメントの端々から感じました。
しかし、裁判の争点は発砲が安全上適切か否かの一点に絞っており、その意味では判決内容はある程度妥当だと私も思います。
ただ、一つ気になったのが、民家が背後にある発砲を認めてしまったことは将来的に禍根を残す判決になるかもしれません。
また、前回書いたのですが、ブログを通じて和解に進んでいるよと情報提供してくれた方がいましたがガセネタでした。
やはり、自分の目と耳で感じた情報をベースに記すことが大切だと改めて思いました。
そして判決が終わって、やや慌ただしい法廷を後にして、私はすぐに隣の詐欺事件の法廷に移動しました。
その事件は涙なしに傍聴できない辛い生い立ちを持つ女性が起こした悲しい詐欺事件だったのですが、それは別の話です。
裁判終わって
この事件では40年以上も経験がある、一人の老ハンターが北海道猟友会を追われています。
支部内部の確執により起こった猟銃所持取消処分ですが、原告となったA氏も猟友会を追われたB氏もお互いの主張に食い違いがあり、その真相が明らかになる前にB氏は北海道猟友会を追われました。
元々はA氏とB氏の現場での食い違いから、B氏が警察に相談し、その主張を受け入れて北海道公安委員会と砂川警察署は現場検証を行い、原告の猟銃所持許可を取り消しています。
少なくとも公安委員会と警察署は猟銃所持許可取消に至る、何かしらの根拠は持っていたのかもしれません。
A氏とB氏、どちらが正しいのか、私には分かりません。
真相は当事者であるA氏とB氏の二人以外、知りようがありません。
しかし、B氏を砂川支部が除名するにしても、せめてB氏がクロであると確証を得、証明した上で実行すべきではないのかと思うのです。
現在B氏はヒグマを獲る経験と能力がありますが駆除活動には制限があり、狩猟にも猟友会に参加してないために保険など面倒なようです。
しかし、猟師は必ずしも猟友会に所属する必要は特にありません。
猟友会に所属せずに活動している猟師の方も一定数います。
以下のサイトは猟友会に所属するメリットとデメリットを紹介しています。
参考サイト:
駆除の報奨費は多くが地方交付税 支払っているのは大都市の皆様です
有害駆除に参加すると地方自治体から参加費用が各猟師に支払われます。
その多くは地方交付税※1で賄われています。
※1地方交付税:
国が地方に代わって徴収する地方税(地方の固有財源)であり、地方公共団体間の財源の不均衡を調整し、どの地域に住む住民にも一定の行政サービスができるよう財源を保障するため、地方公共団体の財政状況を考慮して配分されています。
参考サイト:
このように北海道に限らず各都府県の有害駆除にかかる費用はその地域での財源からではなく、日本中の市町村から集められ各地域に配分されているお金です。
駆除に参加した猟師に支払われている報奨費は貴方が支払っている税金でもあります。
ですので、今回の事件に限らず今後も駆除にかかる事件事故については、自分たちが納税しているお金が使われているのだと知り注視して欲しいと思います。
日本ハンター協会
今回の事件を振り返って、猟友会に伍する組織があっても良いかもしれないと思いました。
ネットで検索すると猟友会に馴染めない方も多いようです。
そんな方々が集まれる、webを中心に繋がる新しい猟師の組織。
命名、日本ハンター協会。
なんかいいかもしれませんね。
どんな組織やサービスも競争のないところに進歩はありません。
そして、選択肢があるというのは大切なことです。
したっけぃ