2020-04-05 No.590
どうも、北海道十勝のハンターモーリーです。
2018年8月 北海道砂川市において
同猟友会の有害駆除の2名が
砂川市職員1名と警察官1名の
立ち合いのもと同市内において
ヒグマ(子熊)の駆除を行い、
2019年、二名の内一名の猟師の
猟銃所持許可が取り消しになる事案が発生しました。
話題になった事案なので、
知っている方もいると思います。
しかし、
もう一人の猟師が
北海道猟友会砂川支部を
除名勧告された事実は知られていません。
関係者がブログを書いたり
訴訟にまで発展しそうなので、
改めて事件として整理しました。
記事内容:
・事件概要 ・関係者ブログ「有害駆除 やってらんないよ!」の内容 ・処分を不服として、訴訟へ ・関係者から連絡が来た ・資料編 |
関連記事:
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【事故記録】2018.8北海道砂川市猟銃所持許可取り消し事件 その4 裁判が始まる
【事故記録】2018.8北海道砂川市猟銃所持許可取り消し事件 その5 裁判は珍しい展開へ
事件概要
[北海道十勝 木に自分の臭いを付けているヒグマ]
日時:2018年8月21日
場所:北海道砂川市
内容:砂川市からの要請で地元猟友会の2名(A氏とB氏)がヒグマ(体長80cm程度の子熊)を駆除した。砂川市役所職員1名と警察官1名が立ち会う。
その際、A氏による安全確認を怠った発砲があった可能性があり、B氏の銃床が破損。
翌年の2月、B氏が池上氏を警察に告発し、検察は不起訴とするも、北海道公安委員会が違法性を認定。
A氏の猟銃所持の許可が取消された。
A氏は許可取り消しを不服として行政不服審査を申し立てるも棄却。
一方、狩猟免許を扱う北海道は事情を聴くなどした上で、民家に向かって発砲した事など「違法の事実が確認できない」と判断し、狩猟免許の取り消しは行わないとの方針。
A氏は「善意の市民をいたずらに処罰しており不当な処分」として、裁判へ。
以上が概要です。
私の周りのハンターたちも警察や公安委員会に問題ありとする方々が多いのは事実です。
しかし、安全確認を怠った危険な発砲があったとするならば、A氏の猟銃所持取消の措置は妥当だとも思えます。
なお、A氏と共に駆除に参加したB氏の話を直接お伺いできました。
その上で事件について改めて整理しました。
よろしければ、お付き合いください。
なお、この記事は2020.4.5に記載していますが、5.25にリライトしています。
また、長い事件になりそうなので「その1」とします。
書いていて思うのが、長く読みにくい文章で本当に申し訳ございません...
ブログ『有害駆除 やってらんないよ!』
というブログがあります。
2020.4.月現在、当該ブログの更新は
全10記事で止まっています。
このブログは裁判が始まると、
閉鎖する可能性もありますので、
読むなら今の内かもしれません。
ブログの要点を一番下の資料編に書き出しました。
ブログでの3つのポイントを書き出します。
・A氏とB氏のやり取り
・現場に臨場警察官は安全確保と許可についてどのように命令したのか
・検察と公安委員会、警察、市役所の行政としての不一致
A氏とB氏のやり取り
ブログ「有害駆除やってらんないよ!」
によると、ヒグマの駆除に出た2名の内
B氏とA氏のいざこざにより
B氏が池上氏を売り言葉に買い言葉で
告発したと記載されています。
このB氏の警察への告発がなければ、
事件になっていなかったとブログでは読めます。
事実、現場に立合った
警察官も砂川市役所職員も
ヒグマ駆除後に注意するなどの
処分を出していないようです。
ヒグマ駆除について問題となったのは
B氏の告発後からであるように読めます。
現場に臨場した警察官は発砲の許可と命令をだしたのか?
ブログを読むと
A氏が発砲する前に
臨場した警察官と砂川市職員が
近隣住民に家にいるように
安全確保を呼びかけています。
つまりこれから発砲する
可能性があるため、
近隣住民の安全確保をしたということです。
この警察官と市職員の行動により
発砲命令が出たと考えるのも、
現場ならありかもしれません。
実際のところ、
これまでのヒグマ駆除において
警察官による明確な発砲許可は
特に出ていませんでした。
具体的なタイミングなどは
猟師にお任せするのが本来です。
私の知る十勝の事例では
駆除で森の中にヒグマを追う際、
警察官は道路で待機し、
交通誘導や森に人が入らないよう
規制するなどの役割を担います。
実際に森の中でヒグマを探し
発砲するのは猟師です。
森の中まで警察官は随行しませんし、
いても役には立たないと思いますし、
危険な要素を増やすだけでしょう。
残念ですが、
警察官の持つ銃ではヒグマは倒れません。
ここは争点になりそうですが、
B氏によると、
警察官や市職員により近隣住民への
安全確保は行っていたが、
黄色いテープを巻いて現場を特定などの
警察官による安全管理が徹底される前に
A氏が発砲の合図も無く発砲したそうです。
そしてその跳弾がB氏の銃床に当たったとのこと。
跳弾が当たるという事は、B氏がいる方向周辺にA氏が発砲したことを意味します。
A氏の跳弾がB氏の銃床に当たったのが事実だとすれば、一歩間違えれば跳弾がB氏に当たり死亡事故が発生した可能性もあります。
有害駆除の発砲命令について
有害駆除は市町村長が実施し、
現場での発砲判断は北海道公安委員会が
実際には警職法第4条1項により
現場の警察官の判断で決める状況になります。
捕捉ですが、
有害駆除の実施隊員は全員
各市町村の嘱託職員の立場で
有害駆除を行っています。
ですので毎年4月に各市町村長より
任命式が行われています。
しかも、警察官がいない状況でも
現場のハンターが状況に応じて猟銃で
害獣を駆除することを妨げない、
とする警察の例規通達もあります。
警察が関連する通達を出しているので、以下に紹介します。
ヒグマという野生生物への対応を
行政や法律の枠組みで捕えようと
するのは困難なことです。
これまで曖昧模糊としていた、
自治体と警察と猟友会の関係について
裁判によって各々の役割が
明確化がされるのは好ましいことです。
ヒグマやツキノワグマの数が
増えていることから、
今後の指標となる重要な裁判になると思います。
検察と公安委員会、警察、北海道、市役所の行政としての不一致
今回の事件では関わる行政が5つあり、
立場を異にしています。
検察は、不起訴。
北海道公安委員会は、違法性を認め、猟銃所持許可の取消。
北海道警察砂川警察署生活安全課は、公安委員会にならい銃の取り上げ。
北海道は、狩猟免許取り消していませんでした。
砂川市役所は、これまで有害駆除に従事してきたA氏の行動を咎めておらず、従事者証を取り上げるなどの処置はしていません。
つまり、A氏が罠の免許を持っていれば、罠での狩猟や駆除は可能ということです。
特に検察が不起訴とした処分に対して、
現場に近い公安委員会と警察署は
違法性ありとして猟銃所持許可の取消しとしています。
司法と司法に準ずる組織が
違う立場を取っているように見えます。
一方、
狩猟免許を出している北海道も
有害駆除の許可を出している
砂川市役所もお咎めなしとしています。
行政の立場の不一致がこの状況で見て取れます。
A氏の立場(追記:2020.5.25)
当初このブログを読んでいて、
A氏とB氏との個人的ないざこざによって
告発にまで発展した事案だと思っていました。
しかし、B氏の話を聞くと違った景色が見えてきました。
ブログ「有害駆除やってらんないよ」は
A氏の塾の教え子がつくった
A氏サイドのブログですので、
内容はA氏寄りに構成されているようです。
また、調べるとA氏は
市議会議員(昭和58年-平成11年)の
長い経歴があり市長選挙(平成11年)にも
立候補した事があります。
自身の教え子が
砂川市役所農政課にもおり、
元市議会議員であることから
砂川市役所農政課にも顔が利く立場であることが伺えます。
この事が砂川市役所が
公安や警察と立場を異にする
理由である可能性もでてきました。
例えば、
私が狩猟や駆除の際に問題を起こし
猟銃の所持許可が取消された場合、
狩猟免許も駆除従事者の資格も
同時に取消されるのではと思います。
しかし、A氏のケースでは
狩猟免許も駆除従事者の資格も取り消されていません。
傍からみると、
元市議会議員のA氏へ
北海道道庁や砂川市から
なんらかの忖度があったと見えてしまいます。
最高のストーリーテラー、
漫画家山岸凉子先生は北海道砂川市出身です。
訴訟へ
警察官職務執行法と安全確認の上の発砲
同件でA氏は
北海道公安委員会の処分を不服として
札幌地方裁判所に訴訟を起こす予定とのことです。
争点はどうなるか分かりませんが、
「警察官職務執行法第4条第1項」
(熊等が住居集合地域等に現れ、
人の生命・身体への危険が生じた時の
対応における警察官職務のあり方)
が重要な争点の一つだと思います。
「警職法第4条第1項に基づく警察官による命令は、命令を受けた者に、命令に従う義務を生じさせることになることから、同項に基づく命令は適切に行われることが必要である。」
要は現場に臨場した警察官が
適切に命令を行ったのか否か?
でしょうか。
それに加えて、
A氏による発砲が
安全管理を徹底した上で
行われたのか否かについても、
争点になるかもしれません。
帯広市の事例
2019年に北海道帯広市内の小学校の
グラウンドにヒグマが出没し、
地元猟友会が住宅街のど真ん中で
即日ライフル銃で駆除した事例があります。
その手際は砂川市と比べて鮮やかです。
帯広市と警察署と猟友会の連携があってこその迅速な対応でした。
ただし、後から話を聞くと
臨場した警察官の命令を
スマホで録音したり、
命令書を書面の形で発行するよう
交渉したり大変だったみたいです。
お疲れ様でした。
関連記事:
この裁判、
札幌地方裁判所とのことなので
可能であれば傍聴を希望しています。
関係者から連絡がきた
5月15日、
砂川市猟友会のC氏から連絡があり
B氏が「事実関係を説明したい」と
言っていると、話を頂きました。
私の連絡先をC氏からB氏へ
伝えて頂きました。
近日中にB氏の話をここで紹介できるかもしれません。
できれば、私のフィルターなしで
B氏の主張をこの記事のコメント欄に
直接書いていただくのが一番かと思いますが。
どのような形でB氏の話をお届けするのか未定です。
現場に近く、
かつ当事者ではない
C氏からの客観的な話も伺えれば、
現場の詳細な状況をお伝えできるかもしれません。
しばしお待ちください。
つづく
したっけぃ
資料編
この事件は狩猟に関わる人にとって
重大な事件であることから、
以下に資料編を残します。
ブログ「有害駆除 やってらんないよ!」要点抜粋
ブログ「有害駆除 やってらんないよ!」が裁判により閉鎖される可能性があることから要点を抜粋します。
・駆除対象の熊は子熊で、付近に母熊がいる可能性が高い
・A氏は子熊なので駆除の必要は無いのではと市職員へ提案
・市職員は目撃情報が頻発していることから駆除を依頼
・市職員と警察官は付近住民へ駆除のため家からでないよう注意し安全確保を図る
・A氏は土手の中腹にいるヒグマを確認
・A氏はB氏に道路側を警戒するよう依頼し、安全確認の後発砲し子熊を仕留める
・その後B氏は子熊が倒れている脇の藪から出現し、A氏は一瞬母熊かと身構える
・駆除終了の数時間後、B氏がA氏の撃ったが弾が跳弾となり銃床に当たったと言う
・B氏は不満をためつつ損害保険で修理するが、A氏に「誠意」を示すよう迫る
・売り言葉に買い言葉からB氏は、A氏を警察に告発する
・警察は現場検証を行うも、跳弾の証拠となる弾は発見されず事件は不成立
・ヒグマを獲った時、A氏の跳弾でBさんの銃に傷がついた可能性がある
・その際のやり取りの中でA氏とBさん両者間に確執が生まれた
・言い争いの中の売り言葉に買い言葉から、BさんがA氏を「民家に向かって発砲した」と警察に告発
・砂川警察署はヒグマは子熊のため獣害とは認められないとの見解を出す
・駆除の許可を出すのは北海道知事、許可申請をするのは市町村長、現場を仕切るのは現場の役所と臨場警察官。駆除従事者は指示に従って引き金を引くだけ(A氏の見解)
・砂川市役所は駆除は問題なく終了の立場
・もし安全管理に問題があったとしたら、責任は駆除従事者ではなく現場の役所と臨場警察官ではないか(A氏の見解)
・警察官は現場での協議後、2軒の住民に避難指示を出し、自らも避難している。(このことことから警察官は発砲の許可を出していると(A氏の見解)
・発砲先には3mの安土(バックストップ)がある
・北海道は平成29年に「北海道ヒグマ管理計画」を策定し、駆除などの適正管理計画をすすめている
・2019年3月11日検察官からの尋問があった。再三聞いてきた尋問内容は「仰角80度で撃ったことをどう思うか」
・2019年3月22日に弁護士から不起訴になったと連絡あり
・A氏が持っていた4丁の銃は領置されていたが銃は返却しないと警察に言われた
・不起訴には「証拠不十分で犯罪が立証できない不起訴」と「犯罪事実はあるが起訴するまでもない不起訴」があると警察官が言った
・A氏のケースは「犯罪事実があるが起訴するまでもない犯罪」なので、銃の返却はしないとのこと
・近く公安委員会から「聴聞(銃所持取消処置についての反論の場)」があるので、不服はそこで申し立てよと警察官
・聴聞には砂川市役所から2名が参考人として参加
・聴聞の違反理由には「鳥獣保護法によらない銃猟が銃刀法第10条に2違反するため、銃刀法11条第1項の規定により許可を取り消す
・有害駆除は市町村長が実施し、現場での発砲判断は公安委員会(警職法第4条1項(緊急事態)適用で臨場警察官の判断で)が決める(A氏の見解)
・駆除の際は音声なり画像なり客観的な(臨場警察官の許可の)証拠を残すことが望ましい
・聴聞の結果、猟銃の所持許可の取消し処分の通知を受け取る
・本件は検察では不起訴処分も、警察は裁量権をたてに猟銃所持許可は取消通知を出す
現在分かっている時系列
以下に、報道や後述するブログからわかる情報を時系列にまとめました。
2018.8.21 砂川市より要請を受け、北海道猟友会砂川支部長のA氏が、もう一人の猟師B氏とヒグマ(子熊)を駆除。とどめを刺す際にA氏の跳弾でB氏の銃が傷ついた可能性。この後、二人には確執が生まれるた可能性。
2018年暮れ:警察より検察に書類送致され、A氏の猟銃所持許可が差し止めされる
2019.2月:A氏とB氏の言い争いが続き、売り言葉に買い言葉からB氏がA氏を警察に告発 ※この辺りの時系列が不明
2019.3.11:検察官からの尋問(仰角80度で何を撃ったかについて?)
2019.3.22:弁護士(※1)より不起訴との連絡
※1中村憲昭弁護士(猟師)だと思われる
2019.3.22以降:不起訴を受けて領置されていた4丁の銃の内、更新切れ所持許可が消失した2丁の猟銃の所持許可を回復するために再申請も不許可
2019.4.9:聴聞(※2)実施の連絡が警察からあり聴聞通知書を受け取る
※2聴聞(銃刀法第12条)とは、猟銃の所持許可の取消がされる場合、公開の聴聞が行われ、証拠を提出して釈明できる場のこと
2019.4.17:北海道公安委員会による聴聞実施。記事にもブログにもなっていないが、そのまま猟銃の所持許可が取り消された
2019.5.8:猟銃の所持許可の取消し処分の通知を受け取る
2019.5.8以降:A氏が北海道公安委員会の処分を不服として行政不服審査を申し立てる
2020.4.1:同氏が申し立てた行政不服審査が棄却される
2020.4.2:同氏は北海道公安委員会の処分を不服として札幌地方裁判所へ訴訟の方針
日時不明 B氏は砂川市の猟友会を追われる
日時不明 A氏は事件後も猟銃なしで、地元の駆除会に参加している
2020.5.15:砂川市猟友会のメンバーから連絡があり、B氏がモーリーと話がしたいとのこと。モーリーが連絡先を伝える
2020.5.25:B氏と電話で連絡をとる。話を伺いモーリーが事件をB氏の立場からも把握する。この事件は単純にヒグマ駆除に従事したA氏が警察の無理解によって所持取消を受けた事件ではなく、A氏の猟師としての姿勢が問われる事件なのかもしれないと、モーリーが感じる。
2020.5.28 モーリーが砂川市の駆除現場へB氏と行く。B氏が作成した報告書や砂川支部の会報や除名勧告通知等の資料コピー(22枚)を受ける
2020.6.7 ブログ【事故記録】2018.8北海道砂川市猟銃所持許可取り消し事件 その3 砂川市駆除現場にて 更新
2020.7.3 北海道札幌地方裁判所において、A氏の裁判が始まる
2021.10月 裁判が非公開で進む中、証人として臨場した警察官や砂川市職員が証言をする
2021.12.17 地方裁判所の判決
追加項目があれば、随時更新予定。
以上