2018-12-16 No.325
[2016.6北海道根室 エゾシカ♂のグループ]
『最近、野生生物の農業被害などが増えていると、
報道でも目にするけど、どうしてなんだろう?
現場の人の声を聞いてみたい。』
といった疑問を持っている方へお答えします。
本記事の内容 ・エゾシカが増える6つの理由 |
どうも、モーリーと申します。
当ブログへご訪問頂きありがとうございます。
ハンターであり、
自然環境調査の仕事をしている背景を持つ私が、
見たり聞いたりしたことをお伝えします。
エゾシカが増える6つの理由
[2017.8北海道知床 芝生をはむエゾシカたち]
次の6つです。
1.オオカミの絶滅 2.野犬・犬の放し飼いの減少 3.狩猟者の減少 4.農作物・牧草(高栄養)を食べてることで増加 5.耕作放棄地の増加により広葉樹林増え、シカの生息環境が増えた 6.戦後の拡大造林事業による広葉樹林の皆伐 |
1.オオカミの絶滅
北海道のオオカミが絶滅したのは、
1890年頃です。
エゾオオカミがいる事で、
エゾシカの個体数増加の抑制に
ある程度貢献していました。
アメリカの研究では、
オオカミが0歳の小鹿を積極的に
とっているとの例があり、
シカ増加をある程度抑制していることが
示されています。
一方で、1840年代に北海道を訪れた
松浦武四郎は
著書『東蝦夷日誌』のなかで
「開拓前の北海道は原始の森に覆われ、
山野に満ち溢れるほどのエゾシカがいた」
と述べています。
この頃はエゾオオカミとエゾシカが
共存していたことから、
オオカミがいても劇的な増加抑制効果は
ないとも読み取れます。
2.野犬・犬の放し飼いの減少
シカの増加抑制というよりも、
野生生物の人の住む集落や街への侵入の
防波堤になっていたのが、
野犬であり、
放し飼いにされた犬たちでした。
時折、近隣の畑の中を
原付で走っていると
放し飼いにされた犬が追いかけてきて
怖いです…。
人間も怖いのですから、
エゾシカも犬は怖いでしょう。
犬がいる集落には
エゾシカも近寄りません。
3.狩猟者の減少
狩猟者の存在も
エゾシカ増加の抑制に
一定の成果はあげていると
実感しています。
今現在、一番エゾシカの増加抑制に
貢献しているのは、現場のハンターたちです。
その人口が減少することは、
将来的には野生生物の管理を
代替する方法が必要になってくる
気がします。
個人的には新人研修の充実や、
猟友会の年会費を安くするなど、
新しい人が参加しやすい
仕組み作りが必要だと感じています。
4.農作物・牧草(高栄養)を食べてることで増加
実はこれが一番の
増加理由ではないだろうかと
思っています。
元々はエゾシカたちが
生息していた森を切り開き
畑にして、そこに高栄養な作物を植えています。
その高栄養な作物を
エゾシカが食べることで、
更に繁殖していきます。
内地ではあまりないかもしれませんが、
牧草も高栄養な植物です。
農家さんがエゾシカから生息地を奪い、
畑地にしてしまったのですから、
農業被害と言わずに、
「おすそ分け」や「お供え物」と
解釈したら万事解決なような気もします。
ダメでしょうか?
明日は農家さんとランチ予定なので、
その辺りを聞いてみます。
5.耕作放棄地の増加により広葉樹林増え、野生生物の生息環境が増えた
北海道十勝は農業王国なので、
耕作放棄地はあまりありません。
内地では耕作放棄地が多く、
そこに木や草が繁茂し、
野生生物の生息しやすい環境に
変わっていっていると聞きます。
耕作放棄地は集落や町に近く、
放棄地の存在が野生生物を
人の近くに誘引している
現状があります。
6.戦後の拡大造林事業による広葉樹林の皆伐
戦後の復興時に木材の必要性から
大規模な造林事業が行われ、
山野の広葉樹林が伐開され、
代わりにスギなどの
針葉樹を植林しました。
針葉樹林の林床は
広葉樹林の林床に比べ、
植相も貧相です。
野生生物はそのような針葉樹林を避け、
集落近くに住み着くようになります。
上記が、
エゾシカや野生生物が増え、
人の生活圏で多く目撃されるようになった
6つの理由です。
では、どうしたら良いのでしょうか?
次回に続きます。
次回予告
増えるエゾシカへの3つの対策
・シカ柵設置
・狩猟で獲るべし
そして…
したっけぃ