2017-09-17 No.214
どうも、モーリーです。
知床から十勝へ帰ってきましたが、やや風邪気味です。
熱はあまり上がりませんが、咳と鼻がなかなか止まらない風邪です。
貴方はいかがお過ごしですか。
風邪など引いていませんか。
今回はヒグマの力がどのくらいなのか、そしてヒグマと出会った時の対処法について紹介します。
ヒグマの力
[2017.8北海道知床ルサフィールドハウス展示物より ヒグマの爪により穴が空いたヘルメット]
前回の記事に続いてヒグマについて紹介します。
上の画像のヘルメットに穴が開いているのが見えます。
この穴はヒグマの爪によって開けられた穴です。
ヘルメットに穴を空けたその力、さすがです。
人も素手ならどう頑張っても、穴は開けられないでしょう。
[2017.8北海道知床ルサフィールドハウス展示物より ヒグマの爪により穴が空いたヘルメット]
このヘルメットは北海道知床のガイドセンター「ルサフィールドハウス」の展示物のヘルメットです。
このヘルメットはヒグマと遭遇した方が、自身のリュックサックとヘルメットを脱ぎ捨て、ヒグマから逃げた時の実物です。
遭遇した方は無事にその場を逃げ去りました。
そのヒグマはヘルメットをいじり、爪で穴を開け、リュックサックにも傷を付けています。
詳細は分かりませんが、その後そのヘルメットとリュックサックは回収され、今はルサフィールドハウスに展示されています。
ヒグマに奪われた物品をヒグマから回収する行為は、ヒグマの執着心を逆撫でする危険行為でNGなのですが、このケースでは回収したようです。
回収した理由については、今度知床財団に聞いてみようと思います。
このヘルメットやリュックサックを回収した方の臭いをヒグマはずっと覚えているので、もしそのヒグマに回収した方が近づく事があれば襲われる可能性が高いといえます。
冗談ではなく本当の話です。
ヒグマの執着心
ヒグマはストーカーのように執着心が強く用心深い性格です。
上のヘルメットや下のリュックサックは、ヒグマに襲われた人が逃げるために投げ捨てたものです。
本来は、ヒグマに出合って投げ捨てたものは、そのままヒグマに差し上げるものです。
もし皆さんがヒグマに遭遇して逃げる際は、自身のリュックやその他ものを投げ出すのも有効な対処法です。
ヒグマはその物品に興味がそれるので逃げ出すチャンスが増します。
リュックに財布が入っていても、ヒグマに差し出し、財布は諦めてください。
ヒグマの執着心を理解せずに発生した事件が『福岡ワンダーフォーゲル部ヒグマ事件』です。
1970年7月に死者3名を出した事件です。
ヒグマに遭遇した福岡のワンゲル部が自分たちの荷物をヒグマから奪還するための行動をとり、死者3名がでる事件になってしまった事件です。
詳しくはリンク先をご覧ください。
ヒグマと出会ったら
[2017.8北海道知床ルサフィールドハウス展示物より ヒグマの爪により穴が空いたリュックサック]
ヒグマを見かけた時の、処し方を紹介します。
距離100m以上
心配ない距離です。
基本的にはヒグマを刺激しないよう、声を出さず、急に動かず、ヒグマを見つめつつ、ゆっくりと後退。
または、ヒグマが立ち去るのを待ちましょう。
この距離からヒグマが人を襲うことはほぼ皆無です。
一番大切なのは、冷静に平常心を保つことです。
・ヒグマがこちらに気が付いていない場合:
静かにその場から離れる。撮影も可能。ライフル銃なら当たる距離です。
・ヒグマが気付いている場合:
静かに背を見せずその場から離れる。撮影も可能。
・近づいてくる場合:
ヒグマは目が悪いので、人間に気が付いていない場合が考えられます。
まずは人であることを知らせるために、ゆっくりと大きく手を振る、「ホイホイ」(ハンターたちが獲物を追いこむ時の掛け声)と声を掛けるなど、こちらの存在を知らせてあげましょう。
大抵の場合は立ち去るでしょう。
ヒグマとの距離(10m以内)
この距離で出会う時は、いきなり出会ってしまうケースです。
以下のようなケースです。
このケースは、ヒグマに一喝してヒグマが立ち去ったケースです。
このようなケースでの正しい処し方は分かりませんが、やってはいけないことは分かります。
・慌てない、平常心を失わないこと
・背を向けて逃げ出すこと
・脅かすこと(この動画での一喝は脅かしに当たらず、諭す感じです。一喝した人の優しさはヒグマにも伝わります)
この動画の中に声が聞こえると思いますが、男性も女性の声もいずれも慌てていません。
女性は知床で長年ヒグマの撮影をしている方、男性の声は私の声です。
この動画のように、慌てずに対処することが肝心です。
以下に知床財団が提案するヒグマとの遭遇の際の対処法を記したサイトを紹介します。
ヒグマの管理
年40頭の駆除
知床は世界自然遺産です。
そこでもしヒグマによる事故が起きると、環境省や知床財団、斜里町や羅臼町はその管理責任を問われることになります。
また、農業や漁業被害は例年でています。
そのため、人的、及び農業漁業関連事故を軽減・予防するために年に40頭程度のヒグマを捕獲(猟銃により駆除)しています。
知床はヒグマの生息域であり、後から来たヒトがヒグマの生息域を荒らして(町や畑地を作るなど)います。
そんなヒグマの生息域において、ヒトの被害や農業や漁業被害がでるのは自己責任です。
今回、知床財団の方たちとも話す機会がありましたが、その職員の多くはヒグマなどの野生生物を大切に感じている信頼できる方たちだと印象を持ちました。
ただ、知床財団は管理している立場から、また環境省や斜里町羅臼町は行政の立場から、観光客や住民との事故発生を防ぎたいと思っています。
ヒグマによる事故が起こってから対処すべし
ここ数十年間、知床ではヒグマによる人的被害(怪我や死亡事故など)は起こっていません。
知床のヒグマはヒトとの関わり方を十分に認識しているのではないでしょうか。
ヒトがヒグマに出会えることを喜ぶ状態は、ある意味自然保護の成果の一つだといえます。
世界自然遺産の知床で、事故が起こってもいないのに、予防のためにヒグマを年40頭も駆除するのは行き過ぎた行為といえるでしょう。
「ヒトと接点をもったヒグマは駆除する」という方針を出して実施している国立公園は世界で知床だけです。
比喩的な話ですが、私たちはヒグマよりも遥かに多くの事故を出している車を容認しています。
それは、車により人が死んだとしても、車社会の利便性の方が大切だと認識しているからです。
交通事故で、毎年何千人(2016年は4000人程度)もの方たちが事故死しています。
一方でヒグマが原因の死亡事故は、毎年0.93件。1980-2013年の間で28件です。
ヒグマによるヒトへの被害については、発生してから、そのヒグマを駆除する方針で良いでしょう。
車も危険な運転をするからといって予防手段で運転免許を取り上げることはしません。
事故が起こってから対処しているのです。
ヒグマも同じで、人を襲う事件が発生してから対処する方針を提案します。
貴方はいかがお考えですか。
知床はヒグマの生息密度が世界一であり、かつ世界自然遺産の観光地です。
ヒトと野生生物との付き合い方を考える絶好の場所です。
そんな知床へ遊びに来てください。
したっけぃ