2023-12-07 No.1032
どうも、北海道十勝のハンター モーリーです。
令和5(2023)年晩秋、北海道道南の函館市近隣の福島町において登山中の大学生がヒグマに襲われ死亡し、その後地元の消防隊員が同ヒグマをナイフで撃退殺傷する事案が発生。
ここ35年間ほど落ち着いて推移してきたヒグマ行政を転換させる事案になりえるかもしれません。
この記事では同事案概要を整理し、感想や雑感も記しておきます。
日時:令和5(2023)年10月29日~11月2日
場所:北海道福島町大山軒岳(だいせんげんだけ)。標高は1,072m。福島町は人口3500ほどの風光明媚な漁村。2021年にもヒグマによるとみられる女性襲撃事件が発生している。
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内容:
令和5(2023)年10月29日
静岡県出身で北海道の大学で学んでいた学生(22歳男性)が北海道福島町大山軒岳に登山に行くと言ったままへ行方不明に。
10月31日10時30分頃
福島町消防署員41歳(Aとする)と36歳(B)、隣接する知内町の消防署員41歳(C)の3名が大山軒岳に来ていた。登山開始から3時間ほど経過し7合目付近の急な登山道を登った先にある「休み台」という場所で休憩していた。
周囲は樹林等で鬱蒼としている場所。
ヒグマがその樹林や草地の中から駆け上がって来た。
3名らが「オイオイ」と声を発生しても構わずに向かってきて、C氏を襲撃し首や太モモに噛みつく。
A氏がC氏を助けようと刃渡り5cmのナイフでヒグマへ応戦。
A氏は反撃にあい脇腹や太モモに軽傷を負う。
喉に傷を負ったヒグマは歩いて後退した。
なお、消防署員3名が大山軒岳に来ていた理由は明らかになっていないが、エクササイズやレジャー目的での登山だったと思われる。
同日、消防署員の被害が認知され入山規制を実施。
同日19時30分頃
登山口の駐車場に無人の車が発見されるも、車の使用者の連絡が取れず。
11月1日
防災ヘリを飛ばし、スマホ着信のGPSなどを頼りに役場や消防署の協力で捜索を開始。
11月2日
6合目付近になにかあることが判明し付近を捜索。
喉元に傷があるオスのクマの死骸を発見。
さらにクマの死骸の30m先の藪の中に土や枝が被せられた男子学生とみられる遺体とリュックを発見。
場所は登山道から見えない場所であった。
遺体の損傷は激しく心肺停止で、死因は多発性損傷による出血性ショック。
その後、北海道警察によって司法解剖と遺体のDNA鑑定で行われ、被害者は大学生22歳と判明。
29日に登山後、31日に消防署員がヒグマに遭遇する前に被害にあっていたとみられる。
なお、ヒグマは獲物を獲ると土や枝を被せる方法で獲物を保管する。土饅頭という。
11月24日
ヒグマの胃からでた人の下半身を調べた結果、DNA鑑定の結果から遺体は大学生であることが最終的に判明した。
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本州でも北海道でもクマの数が増え、そして人を恐れなくなりました。
そして、クマとの遭遇やクマによる人への襲撃事件の報告が増えています。
北海道では平成元年から春クマというヒグマ駆除活動を辞めて以来、その生息数はずっと微増してきましたし本州も似たような状況なのでしょう。
今年の夏は北海道の暑くドングリやクルミ、ヤマブドウやコクワの実が不作であると聞いており、よりクマたちも人界近くまで餌を探しに来ているのでしょうか。
あと、実は人間界の経済や戦争の影響もあると感じています。
車のガソリン代が高騰し、銃の弾は大暴騰しています。
特に北海道では比較的安い鉛弾の使用も禁止されていることから、ガソリン代を払って山に行き高価な銅の弾を撃つという事が経済的な負担になりつつあります。
弾代なんて私が狩猟を始めた10年ほど前は一発500円程度だったのが、今では一発で1300円ですよ。
世界各地で戦争や紛争があれば、日本の猟師が撃つ弾代が高騰するのも必然。
1300円+ガソリン代といえば、インデアンカレーにトッピング全乗せできる値段です。
心理的に猟に行くより「どうせならインデアンに行ってカレー食べよ」となってしまいます。
人と山の境界で狩猟する絶対数が減ることで、よりヒグマたちが人界へアクセスし易い環境ができているような気がします。
さらに言うなら、今の制度です。
今は冬の狩猟に行かず春まで獲物を獲らないことで、猟師がシカやクマを意図的に増やす傾向にあると思っています。
なぜならば、狩猟期間(晩秋から春)で獲るよりも駆除期間(春から初秋)でシカやクマを獲るほうが行政からの金銭的なインセンティブが働き、結果的にシカもクマも増える制度になってしまっているのです。
残酷な話ではありますが、狩猟期間の冬は妊娠時期であることからシカやクマの数を減らすならこの狩猟期間に獲ることが一番効率が良いのです。
稼ぎたい猟師は冬の狩猟期間に獲物を獲らず、子供が生まれ頭数が増える春、行政からお金がでる春を待って駆除で獲物を獲ります。
これについてはいずれ記事にしたいと思いますが。
とにかく、現行(2023年度現在)の制度は環境省や地方自治体の制度設計ミスだと認識しています。
関連記事:
ツキノワグマやヒグマの捕獲数が増加している件 2019年は5000頭
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今回の一番の驚きは、刃渡り5cmのナイフでヒグマを撃退し、致命傷まで与えた福島町の消防署員41歳です。
襲われている仲間を5cmのナイフ一本で救出し、なおかつ喉に致命傷を与える胆力。
普段から体を鍛えている消防署員だとしても、仲間を救うために5cmのナイフ一本でヒグマに戦いを挑む勇気。
自分に置き換えて、できる気がしません。
私はこの消防署員を尊敬します。
しかし、銃刀法によって定められていたとしても、護身用に必要なものであるとして山に入る時は大きなサバイバルナイフなどは携行できるようにして欲しいものです。
もし、この法律がなかったならば、亡くなられた大学生もサイバイバルナイフを持って入山し、ヒグマを撃退できた可能性だってあるのです。
銃刀法二十二条があることで人がヒグマに殺された、という解釈もできるのかもしません。
銃刀法第二十二条(刃体の長さが六センチメートルをこえる刃物の携帯の禁止)
何人も、業務その他正当な理由による場合を除いては、内閣府令で定めるところにより計つた刃体の長さが六センチメートルをこえる刃物を携帯してはならない。ただし、内閣府令で定めるところにより計つた刃体の長さが八センチメートル以下のはさみ若しくは折りたたみ式のナイフ又はこれらの刃物以外の刃物で、政令で定める種類又は形状のものについては、この限りでない。
参考サイト:
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2021年7月に同じ福島町で起こったヒグマ襲撃事件についてです。
この時の被害者は77歳の女性でした。
この時もササ藪の中から損傷の激しい遺体が発見され、ヒグマの可能性が高いとされた事件です。
この時に襲ったとされるヒグマですが、その後駆除はされていません。
下の記事は2021年の事件概要を整理した記事です。
お時間がございましたらご覧ください。
関連記事:
事故記録 2021.7北海道福島町ヒグマ襲撃事件 ヒグマと共存していた町で事件が起こった理由
この亡くなられた女性もそうですが、今回の男子大学生に対してもご冥福をお祈り申し上げます。
そして、ヒグマにも思いを致したいと思います。
生きとし生ける全ての命に
したっけぃ
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大千軒岳登山中の大学生が、ヒグマに襲われ死亡した事件は、驚きました。
大千軒岳は、報道により初めてその名と所在を知りました。
本州でも、ドングリなどの木の実が不作のため、ツキノワグマが人家や市街地に現われ、人を殺傷する事件が多発しています。
大千軒岳では、3人の登山中の消防士も襲われ、負傷した1人を救うため、もう1人がナイフでヒグマを刺して、撃退したこと、後日、その付近で手負グマの遺体が発見され、当該ヒグマであったことが判明しました。
先に大学生を殺害して、隠しておいた餌(遺体)を横取りされないように3人を襲ったが、返り討ちにあい、喉の刺し傷が致命傷になったのでしょう。
結果論ですが、ヒグマの冬眠前の時期の単独登山は避けるのが賢明だと思うのですが。
とはいえ、3人でも襲撃されたのですから、なんともいえません。しかし、複数人であれば、対処、救助、連絡などにおいて、単独行より適切な措置がとれる可能性が高いと思います。
日頃からの訓練で鍛えて、身体能力が高いとはいえ、刃渡りわずか5センチのナイフで、ヒグマに立ち向かった消防士の勇気と決断に感服しました。本州でも襲撃され、取っ組み合ったり、棒で戦って撃退した事例も目にしますが、ツキノワグマより強大で凶暴なヒグマに、果敢に挑む胆力には敬服します。
自分の家族が襲撃されても、徒手空拳でヒグマに立ち向かえるのか、自信がありません。
15年前、夫婦で黒岳、樽前山登山の際、【ヒグマに注意】の看板を目にしても、登山者が多いから大丈夫と思い込んでいました。
業務以外で、6センチを超える刃物を携帯禁止という銃刀法の規定は知りませんでした。
若い時分、登山の際、りんごや梨の皮剥き用に、6センチ超のナイフを携行していたことがありますが、違反だったのですね。バーベキュー用に包丁を持参するのも、アウトなのでしょうか?
それにしても、熊避け対策(鈴、笛、クマ避けスプレー)をしてこなかったことに、今更ながら冷汗が出ます。