2022-07-28 No.965
どうも、北海道十勝のハンターモーリーです。
北海道標茶町において(2022年)7月以降、放牧中の6頭もの牛がヒグマに襲われる事件が発生。
カメラに写っていた姿等から以下の事が推定されています。
体長:約3m
体重:300-350kg。400kgとする報道もある
性別:オス
年齢:10歳前後
足幅:前足の横幅が18cmと測定
最初の襲撃場所であるオソツベツ(Osotsubetsu)と足幅18cmから付けられたコードネームが“OSO18″(おそじゅうはち or オソエィティーン)。
標茶町では2019年から牛を襲う事件が発生しています。
その時の記事が以下です。
関連記事:
【事故記録】2019.8北海道標茶ヒグマ連続ウシ襲撃事件
おそらく2019年以降に牛を襲撃しているヒグマと同個体、もしくはその一族だと思われます。
気になるのは2021年4月に標茶町の隣の厚岸町でヒトがヒグマに襲われて死亡したとみられる事件との関係です。
襲ったとされるヒグマがその後獲られたとは聞いていません。
ひょっとするとOSO18やその一族の犯行である可能性も否定できないと思っています。
現地でヒグマ対策に当たっている猟友会等の方々のことを思うと頭が下がります。
本当にお疲れ様です。
改めて、標茶町で牛を襲撃し続けているヒグマOSO18について整理します。
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2022年7月1日・11日・18日・26日で計6頭が襲撃を受けている。
2019年以降では約50-60頭の牛がヒグマによると見られる襲撃事件を受けている。
北海道川上郡標茶町オソツベツ及び阿歴内(アレキナイ)
OSO18が事件を起こした標茶町から釧路湿原を望めるコッタロ湿原展望台からの釧路湿原遠望風景。
上記画像が標茶町の牧場です。
今回はこのような牛たちがOSO18のターゲットになってしまいました。
ここでは2022年7月に起こった6頭の乳牛襲撃事件についての報道ベースで分かる範囲で紹介します。
・2022年7月1日(阿歴内:アレキナイ)3頭が襲われ、うち2頭が死亡。もう一頭は軽い怪我。
・7月11日6時(上茶安別:かみちゃんべつ)乳牛1頭(生後10か月) 放牧中の一頭が死んでいるのを牧場経営者が発見。翌日、ヒグマが死骸を40m離れた沢に移動させたと見られる。
・7月18日(茶安別)1頭 電気柵を掘って侵入し牛(5歳メス)を襲撃
・7月27日4時(阿歴内) 1頭(1歳メス) パドック(野外運動場)にいた一頭が引きずりだされた。背中に爪傷があり腹部内臓が食べられていた
上記4件計6頭が今年の被害です。
2019年以降、OSO18やその一族?は上記のような乳牛を多く襲撃しています。
2022年以前においても、標茶町や隣の厚岸町において牛がヒグマに襲われる事件は2019年以降続いており、その数は63頭以上。
63頭以上の内、30頭ほどが死亡しています。残りの半数は怪我ですんでいるようです。
下の記事は2021年7月に厚岸町で起こった3頭の牛襲撃事件についてです。
関連記事:
事故記録 2021.7北海道厚岸町牛3頭の内臓をヒグマが食害した事件
なお、2021年8月※(時期の最終的裏付けはとれていませんが)には200kgある牛が背骨を折られ身体を真っ二つに引き去れる事例もありました。
OSO18の襲撃とは確認できませんが、200kg以上ある牛を真っ二つにする腕力は凄まじいものがあります。
私が獲る大きなエゾシカでも100kg程度です。
そのエゾシカでも十分に重く大きいものです。
その2倍もある体重の牛を真っ二つにするその力に畏敬の念すら感じます。
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OSO18はなかなか捕まりません。
警戒心がつよく経験があり頭が良いからです。
OSO18の特徴を以下に記します。
・基本的にヒグマは獲った獲物に執着し、一度獲った獲物を捕まえた場所には何度も戻ってきます。しかし、OSO18は同じ場所に戻ってくることはありません。襲撃の場所を毎回変えています。ヒトを警戒しているのだと思われます。
・罠にかからない。被害が発生している標茶町と厚岸町に罠を10か所に設置していますがかからない。恐らく家族や仲間が罠に掛かって捕殺されたことを経験として知っているのかもしれません。経験があるようです。
・襲った牛の栄養たっぷりな内臓だけを食べて後は放置します。スキができやすい食べている時間を短時間にしようという心構えに思えます。
・獲った獲物に土を被せて保管する「土まんじゅう」をつくらない。土まんじゅうをつくるとその場所に何度も戻って長い期間をかけて獲物を食べるのですが、それをしない。これもまた、獲った獲物に執着しない柔軟な思想が垣間見れます。
・ヒトによる目撃例が非常に少ない。2019年に自動撮影カメラに映った事例と2019年7月16日15:00頃に牧場の男性が見かけた事例、2022年7月16日に牧場の監視カメラで撮影した事例の3件でしょうか。(もう一件の目視による目撃例があった気もしますが未確認。)とにかく、目撃例が非常に少ないヒグマです。
・夜間の行動を徹底している。猟師が夜間発砲できないことを知っている。
・10歳前後ということから2019年以降に牛を襲う行動を子供や一族や仲間に伝達している可能性がある。つまり、もしOSO18を捕獲したとしても、その子供たちや一族・仲間たちが類似の行動を繰り返す可能性がある。
以上のようなことが特徴として考えられます。
ここ十勝でも2018年にヒツジ80頭がヒグマに襲撃される事件が発生しています。
このように類似する事件もあります。
関連記事:
記録 2018年池田町ヒグマ ヒツジ80頭襲撃事件
このヒグマはすでに捕獲済みです。
また、十勝では2021年に467kgのヒグマも獲れています。
日常茶飯事とはいいませんが、大きなヒグマは北海道に時折いる、という事実も知って欲しいと思います。
ヒグマのニュースで一喜一憂せず、目の前の生活を大切にしたいとも思います。
関連記事:
北海道ではヒグマの駆除がつづく 十勝足寄町で467kgのヒグマも
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2021年11月標茶町と厚岸町、釧路総合振興局、専門家等による「OSO18捕獲対応推進本部」が立ち上がりました。
とった対策は以下:
・専門家を交えた協議及び関係機関との情報共有会議
・モンスターウルフ(狼の姿と音で威嚇する機械)の複数台設置
・自動撮影カメラの増設
・電柵の増設
・猟友会・各役場・国有林や道有林管理者・周辺での工事関係者等との連携
・連絡先
釧路総合振興局保健環境部環境生活課 課長 木村和徳
TEL:0154-43-9150(直通)(内線 2950)
初見でモンスターウルフを見たらビックリしますね。
これは怖いです。
しかし、一過性のもので残念ながらすぐに慣れてしまう気もしますがどうなんでしょうか。
効果のほどを検証してみたいですね。
私なら週に一回は移動させて、ランダム移動配置して利用するかもしれません。
北海道の奈良家町の町工場が手掛けたということなので効果を期待したいです。
2019年OSO18による牛襲撃により以下のような経済的損害の資産がでています。
・標茶町 7000万円
・厚岸町 1600万円
この試算は2021年度までの試算なので、2022年7月の襲撃を加えるとさらに増えているはずです。
なお、襲撃を受けた牛の半数は怪我ですんでいます。
しかし、ヒグマに襲われたショックから乳量が減ることも考えられます。
また、放牧し難くなったことからもストレスなどから乳量の減少が心配されます。
酪農家にとっての影響は甚大であり、OSO18をきっかけに廃業する酪農家もでてきています。
酪農に関していうと昨今の飼料代の高騰などが廃業の主要因かもしれませんが。
そして、周辺の住民も日没までには家に帰らなくてはならないという認識が広まりました。
OSO18により住民の生活行動も変化してきているのです。
標茶町の猟友会の方の談話。
・OSO18は大型のため猟銃一発では仕留めるのは難しい。一発でバイタル(心臓や首、頭など)に当てる必要がある。
・もし半矢(手負い)にしてしまってはさらに厄介な存在になる。
・近年はエゾシカが増え(冬のエサとなる鹿がいるため)冬眠の必要がなくなってきた。冬眠中を狙いたいが冬も移動している可能性がある。
酪農学園大学佐藤嘉和教授の談話。
・繰り返し牛を襲撃していることから、他のヒグマが真似をする可能性がある。第二第三の模擬犯が現れる可能性がある。
地元役場で牧場長を務める方の談話。
・OSO18の子孫が増え、成獣となっていると考えられる。襲撃行動する子孫が道東に広く散らばっている可能性があり、今後もまったく油断できない。
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冒頭にも述べましたが、このOSO18は2021年4月の厚岸町での死亡事故に関係している可能性もあります。
関連記事:
事故記録 2021.4北海道厚岸町山菜取りヒグマ遭遇死亡事故 事故概要と冬眠明けのヒグマのエサ
この事件もあることから”OSO18″はすみやかな捕獲措置が必要だと考えています。
ここでいう捕獲とは捕獲してからの殺処分です。
ここ数年、ヒグマによる事件事故はうなぎ登りです。
どこかのタイミングで、ヒグマによるヒトへの重大な事件が発生するではないかと懸念しています。
すでに札幌市でも2021年6月に4名の市民がヒグマに住宅街で襲撃されています。
不幸中の幸いで死亡事故には至りませんでした。
これまでもヒグマによる死亡事故はありましたが、猟師や山菜採りなど山野での事故が主でした。
しかし、近い将来、住宅街におけるヒグマによる襲撃事件が発生し死亡事故が発生する可能性も否めません。
北海道ではここ数年は800頭程度のヒグマを毎年捕殺しています。
しかし、それでもヒグマは微増傾向は変わりません。
参考資料:
クマ類の捕獲数(許可捕獲)について
ヒグマと人の活動との折り合いのつけ方を真剣に模索する機会は今なのかもしれません。
しかし、未だ社会全体でヒグマ問題を考える土壌は醸成されていないように見えます。
というよりも、昨今の世界と社会情勢が不安定すぎてヒグマについて議論する余裕がないように感じます。
私はヒグマからの影響をどの程度許容するのかという社会的合意形成が必要だとおもっています。
・北海道に生息するヒグマを何頭程度が望ましいのか?(2020年度末で下限値は6,240頭 上限値は23,548頭。現在は13,000頭程度と考えられる。道総研調べ)
・農業・酪農への被害をどの程度まで許容するのか?(2020年度の調査では2億5千万円程度。北海道庁調べ)
・ヒグマとの距離感と関係性の啓発活動の推進
ヒグマとの距離間について考えると思い出したことがあります。
2021年に札幌市内に出没したヒグマを地元テレビ局がタクシーで追い回して、ヒグマをより興奮させて被害を増大させた可能性があります。
あのようなメディアの行為は迷惑であり、ヒグマによる被害を増大させる恐ろしい行為であるというメディアへの啓蒙活動も大切だと感じました。
このブログのテーマの一つに「自然環境と人間の経済活動の折り合えるポイントを模索する」というものがあります。
このブログを通じて貴方と共に学ぶことができれば幸いです。
まずは貴方と私で考え、そして小さなことから実践していきましょう。
個人的には熊たちと私たちヒトの自他共栄できる北海道を目指していきたいと思っています。
しかし、そのためにどうしたら良いのかいいアイデアが浮かびません…
貴方のアイディアをお聞かせください。
したっけぃ
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蛇足。
OSO18の話を聞いて思い浮かぶのは、赤カブトです。
赤カブトとは「銀牙-流れ星銀」という漫画作品に登場する賢く巨躯を持つクマで奥羽山脈において牙城を築きます。
その赤カブトと犬たちとの死闘を描いた作品です。
下の動画は『銀牙 流れ星銀』東映公式オープニング。
原作者は高橋 よしひろ先生で同作品は世界中で愛されています。
特にフィンランドでは絶大の人気を誇っているとのこと。
youtubeでも海外からのコメントが見られます。
私も大好きな作品であり、一番好きな漢は「紅桜」。
ちなみにこの動画の0:54からの赤カブトと銀が雪山を駆けながら相対しているカットは短いカットですが最高の作画です。
ここカットの出来の良さは日本アニメ史に残るレベルの作画だと思っています。
犬や馬、猫などの動物を作画でしっかり動かすことは本当に難しいものです。(一方、人間を作画で上手に動かす人は多いです。やはり人間は書き慣れていますので。最近では鬼滅の刃の作画を担当したユーフォテーブルというスタジオは素晴らしい&凄まじい作画レベルにあります。)
このカットの原画マンは誰なのでしょうか。
原作の高橋先生しかり、名もなきアニメーターたちしかり、最高のスタッフたちが心血を注いでできあがるのがアニメーションなのです!
View Comments
ヒグマの牛襲撃事件が多発している状況、酪農家には大きな痛手、周辺住民にとっても不安でしょう。この状況打開のため、早急な駆除が望まれます。
107年前の三毛別事件のヒグマ(冒頭写真、苫前の再現像)の体長2.7m、体重340kgと同程度か、大きいと推測されるとは驚きですね。足寄の467kgという途方もない巨大ヒグマは想像を絶します。推定13000頭も生息するヒグマと人間との共存共栄策は、難題ですね。耕作地や市街地に出現し、被害をもたらすヒグマですが、山奥の森林に食料が十分にあれば、凶作の年以外は里へ下りてこないでしょう。出現するのを防ぐ対策は、関係者、専門家が長年考えてきて、名案がないのでしょうから、素人にはむづかしいことです。
森林伐採、ゴルフ場やリゾート開発などで、動物の棲みやすい適地を減少させてきたツケが回ってきたとも言えます。長い道のりで、時間を要しますが、自然の植生を戻していく試みが大切だと思います。とはいえ、それを具現化することは容易ではありません。
当面、ヒグマの個体数を減らすことが、残念ながら必要かもしれません。
ミウル様、コメントありがとうございます。
oso18の件で本編では書きませんでしたが、なんとなく思っていることがあります。
もし、OSO18が十勝にでていたらニュースになる前に駆除されていたのではないかということです。
十勝の方が狩猟レベルが高いという話ではなく、狩猟に従事する人数、活発な猟友会、若い農家さんが自ら猟銃を獲って獣害を軽減する姿勢などが他の地域よりも見られる気がするからです。
現に足寄で獲れた470キロのヒグマも地元の新聞に少し掲載されただけで、素通りされたニュースです。
標茶町や厚岸町などの街は周辺で連携した広域駆除体制の構築が急務だと思います。
狩猟期間を除くと私たち猟師は原則自分の住む市町村でしか獲物を追う事ができません。標茶町や厚岸町に何名の猟師がいるのかは分かりませんが、人員が足りていないような気がします。
近隣の市町村猟師ならば、越境しての駆除を認める、若しくは北海道内ならばどの市町村でも駆除を認めるような抜本的なルール変更が必要な時期に来ていると感じています。
しかし、これらの動きも老人たちの縄張り意識からか、危機意識の無さからなのか、議論が進みません。
長野県のペンションでもクマが出没したとのニュースが本日ありました。
ミウルさまもおっしゃるように、クマの個体数を減らすことは日本全国の喫緊の課題なのだと感じています。