2022-08-30 No.979
どうも、北海道十勝のハンターモーリーです。
静岡においてニホンザル捕獲を目的とした麻酔銃によるヒトへの誤発射という珍しい事件がありました。
あまり聞いたことがない事件であり、環境省が認定した業者による事件なので記録します。
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2022年8月29日2時50分頃
静岡県富士市中之郷JR富士川駅南旧国道沿い。
富士市は富士山麓の街。
ここは東に富士山、西に名古屋市まで続く広大な山地が広がる自然豊かな土地です。
静岡県富士川において2022年7月頃からニホンザルの目撃情報が多く寄せられていた。
富士川市は麻酔銃を使うと周辺住民にチラシを配り、29日と30日の両日、周辺のパトロールをしていた。
8月29日2時50分富士川町に「サルがいる」と通報が入る。
富士川市の職員3人と委託業者である東京の㈱野生動物保護管理事務事務所のスタッフ1名の麻酔銃によるニホンザル捕獲を実施。
ニホンザルの目撃情報を提供した女性も具体的な目撃場所を指示するために同行。
使用する麻酔矢は15kg程度のサルに効果がある麻酔の量を準備。
銃から空気が漏れていたため銃身にテープを巻いたところ、誤って引き金に触れ、麻酔矢が発射された。
麻酔矢は女性の左上腕部にあたり、撃たれてから徐々に意識が薄れ10分後に女性は意識不明状態へ。
すぐに近くの共立蒲原総合病院に市役所の車で搬送。
およそ一時間後に女性は病院で目が覚め、その夜には自分でトイレにいける状態まで回復。
30日現在、女性は退院済で無事とのこと。
この誤射事件を引き起こした委託業者は東京八王子市に本社がある
株式会社 野生動物保護管理事務所
という会社であると、富士市役所の職員の方から聞いています。
参考サイト:
株式会社野生動物保護管理事務
この会社の獣医師兼猟銃所持者が誤射した人物であると、富士市の担当者はおっしゃっていました。
報道でもこの社名はほぼ公表されていません(静岡県内の報道では一部公表されている NHK静岡NEWS WEBのみ確認)。
事故は誰でもどこでも発生してしまうものですが、この事件をうけて猟友会や他の認定鳥獣捕獲事業者(後述)に迷惑が掛かっている状況があります。
よって、このブログでは社名を公表することとします。
この会社は「~事務所」とありあすので小さな個人事業的な規模を想像するかもしれませんが違います。
㈱野生動物保護管理事務は野生動物の保護や管理について農林水産省や環境省、地方自治体などから業務を請け負っている会社で、77名(2022.4現在)の職員数という規模の会社です。
この規模の建設コンサルタント会社ですと、天下りがいてもおかしくありません。
東京の他に兵庫県と広島県にも事務所を構える大手建設コンサルタント会社で、博士号を持つ職員も複数いるなど野生動物の保護管理について高い技術力を持つ会社であると伺えます。
この会社が蓄積する知見は日本にとっても大切な財産(官公庁の業務発注はすべて税金が原資であるゆえ)であることから、事故発生とその後の事故対応については舵取りを誤らないで欲しいと思います。
公共性の高い会社であることから、その業務内での過失については具体的な事件内容の公表、今後の具体的な安全対策についてなど、記者会見なりHPでの記載はあって然るべきと考えます。
今回は誤射された女性がすぐに退院できたこと、そして後遺症の対応等をしっかりするのであれば、まずは良いと思います。
めざまし8(フジテレビ)の報道によると女性はその後も吐き気が止まらないという親族の話を紹介しているので心配です。
ただし、今回の誤射事は麻酔銃の不具合を麻酔矢を装填したままテープで調整するという、あまりに不用意な事件です。
しかも、人に当たったということは銃口を人に向けています。
現場猫のようないい加減さを感じます。
猟銃所持許可の取消は当然ありえるとして、獣医師の免許も取消になるかもしれません。
なお、報道によると現場にいたのは市役所3名、業者1名、目撃女性1名とありました。
その報道が正しのであれば、麻酔銃の扱いと周辺の安全管理を一人で実施する体制であったということです。
市役所の職員は素人ですので臨場させられません。
委託業者ならば最低でも2名以上が現場に臨場するのが妥当です。
一人は撃つ役割、もう一人以上が周辺安全管理と撃った後の補助などで。
経費削減のために株式会社野生動物保護管理事務所がいい加減な安全管理運営をしていた可能性もでてきました。
また、誤射事件は重大過失であること、及び刑事にあっては親告罪※になるケースであることから、撃たれた女性と示談交渉していると思われます。
※親告罪
被害者の告訴があることを必要とする種類の犯罪。示談が成立すれば公訴はない。
そして、残念ながら誤射事件は時折発生する事件です。
関連記事:
事故記録 2021年3月 栃木県日光市中小来川シカ猟誤射死亡事件
他山の石として、私も気を付けたいと思います。
元々富士市付近にニホンザルは生息していなかった。
今回住民に目撃されたニホンザルははぐれざるであった。
見慣れないニホンザルを気にした地元住民が富士市に相談したことで富士市は麻酔銃によるニホンザル捕獲を決定した。(富士市役所職員談)
参考サイト:
富士市 サルにご注意ください
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今回事件をおこした委託業者は環境省の認定鳥獣捕獲事業者に登録されています。
静岡県にも6社の認定鳥獣捕獲事業者がいます。
当初はこの6社の内のどこかだろうと思っていました。
特に富士市を登録している業者は一社のみです。
当初はこの一社が該当する委託業者かと思い、富士市に確認の連絡を差し上げた次第です。
放っておくと誤解が広がる恐れもありうることから、静岡県の認定鳥獣捕獲等捕獲事業者を守るためにも静岡県及び富士市は委託業者の社名を速やかに公表するのが良いと考えます。
今回は麻酔銃(装薬銃)を持つ業者、ニホンザルを捕獲対象とできる業者がいないため、東京の株式会社野生動物保護管理事務へ委託したのでしょうが、その経緯も説明することで市民は安心できると思います。
なお、認定鳥獣捕獲事業者制度については改めて記事を書きたい思います。
ここでは簡単に説明します。
「猟師の数が減っていること等を背景として野生動物の駆除を各地猟友会に任せるだけではなく、会社やNPO等の法人が業務として請負うことで都道府県を跨いでの駆除等ができるよう設計した制度」です。
以下が環境省の説明です。
鳥獣の捕獲等に係る安全管理体制や、従事者が適正かつ効率的に鳥獣の捕獲等をするために必要な技能及び知識を有する鳥獣捕獲等事業を実施する法人について、都道府県知事が認定をする制度です。※この制度は、平成27年5月に施行した鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律(鳥獣保護管理法)に基づき新たに導入されました。
参考サイト:
環境省 認定鳥獣捕獲等事業者制度
環境省 認定鳥獣捕獲等事業者一覧
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麻酔銃についてはほぼ知識がありません。
よって、環境省が住宅地での麻酔銃の使用について資料を作成していますのでリンクします。
参考サイト:
環境省 麻酔銃の取り扱いについて
ちなみに
麻酔銃がらみで、町に出没するヒグマには麻酔銃を使ってはどうか?という質問を時折受けます。
猟友会の先輩の話ではヒグマ駆除に際しては使えない手段であるとは聞いています。
以下にその理由を箇条書きします。
・ヒグマの皮下脂肪があつくて筋肉注射になり難いこと(麻酔は筋肉投与で効果がある)
・獣医師と猟銃免許の両方を持っている人がほぼいないこと(動物の命を救うために獣医師やっているのに、一方で猟銃で動物を撃つアンビバレンツ・二律背反を一身に宿す獣医はなかなかいないこと)
・麻酔がヒグマに効果があるとしても、麻酔銃を撃ってから効果がでるまで時間差があり麻酔効果がでるまでの間にヒグマが撃たれたことで狂暴化し安全が確保できない
・そもそも、麻酔で眠らせた重いヒグマからどうやって檻に入れてどうやって山まで運ぶのか?ということ
などを上げて住宅地におけるヒグマへの麻酔銃の使用については懐疑的でした。
納得です。
以上、静岡県富士市麻酔銃誤射事件についてでした。
銃身に引き金を引く以外の目的で触れる時は銃身から弾を抜く。
当たり前のことですが初心を忘れずに徹底したいと思います。
したっけぃ
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富士市の猿捕獲時の麻酔銃誤射事故、大事に至らず幸でした。麻酔矢が眼など顔面に当たったら、重大事故になっていたでしょう。モーリーさんが記しているように、専門業者にしては、お粗末な麻酔銃の取り扱いですね。
当地は、山を開発した住宅地で、7〜8年前には、近所の女性2名が猿に襲われ、咬擦過傷被害がありました。警察官が事情聴取に来ましたが、その後、猿捕獲は行われませんでした。私は、5〜6年前の散歩中、10匹ほどの猪親子が道路を横断する姿を目撃し、別の場所で会った人も、違う場所で猪親子を見たと言っていました。猪がよく現れる野原が近くにあるので驚きませんでしたが、同じ頃ツキノワグマの目撃情報の報道には、さすがに驚きました。
しかし、当地では、猪や熊の目撃情報があっても、駆除、捕獲など実施されたことはありません。
野生動物の棲家の山林を開発し、生息地を奪ってきた人間は、住まわせてもらっている、という謙虚な気持で、野生動物と共生していきたいと思っています。
富士市の猿対応ですが、遠方の業者に委託し、多額の費用をかけることに疑問を感じます。
1回の委託費、10万円を超えるのではないでしょうか。注意喚起の広報で十分かと思います。
ミウル様、コメントありがとうございます。
いかがお過ごしでしょうか。
7-8年前に猿による襲撃事件、猪やツキノワグマの目撃など、富士市周辺は自然度の高い豊かな土地なのですね。
当地の情報をありがとうございます。
おしゃる通り「野生動物の棲家の山林を開発し、生息地を奪ってきた人間は、住まわせてもらっている」の気持ちを私も大切にしたいと思います。
私の住む土地も元はヒグマの棲家だったのかもしれません。
ヒグマたちの棲家を奪い、ドングリやコクワの木を伐採し、サケが遡上する川にダムを作りサケの遡上を阻害するなど、さんざんヒグマたちの生活圏を奪ってきたのが私たちです。
人間だけの都合でそんな事ばかりのやってきたのですから、多少反撃されても仕方ないと正直思います。
なお、私も建設コンサルタントだったので概算ですが委託費は1回10万円では収まらないと思います。
今回は二日間に渡って猿の駆除をするということですので、技師Aが2人工、技師を補助するスタッフで技師B(いないですが)2人工、麻酔銃など道具費用、打合せ経費、報告書作成、宿泊費、移動費、諸経費など合計で50万以上は軽く掛かっていると思います。私なら60万くらいの見積もりを出すかもしれません。
ミウル様がおっしゃる通り、私も地域住民への注意喚起で十分だったと思います。
住民たちへ野生動物たちとの付き合い方を学べる機会が必要なのだろうと思いました。
そういうことが地元の猟友会の仕事なのかもしれません。