2024-06-13 No.1042
どうも、北海道十勝のハンターモーリーです。
私がブログも更新せずにのんびりしているこの一年で、北海道や東北を中心にクマの進撃がとどまるところを知らない状況となっています。
ひょっとしたら私が寝ていたせいかもしれません…申し訳ございません…?
昨年度(2023年度)は秋田県におけるクマ被害と捕獲数は北海道を抜いて全国トップとなりました。
2023年度の秋田県のクマ捕獲数は2183頭。2022年度は397頭なので5倍以上の増加でなまら大激増。
なお、2023年度の北海道では1422頭。2022年度は796頭とやはり二倍近くの激増となりました。
そして、2024年5月、その秋田県でツキノワグマによる山菜採り男性が襲撃を受け死亡、そして現場に向かった警察官も襲撃を受けるという事件が発生。
この記事ではその事件について整理します。
なお、情報ソースはヤフーニュースや週間現代などのWEBからどなたでも取得できるものを利用し整理しています。
また、私は2023年に東北で一月ほど滞在し、宮城県や秋田県の猟友会の方々からクマの現状について話を聞く機会もありました。
その時の話も追々綴っていく予定です。
参考サイト:
クマの攻撃で鼻が半分取れ、「顔中血まみれ」の警察官が「助けてください」と…秋田でクマに襲われ死亡した男性の「壮絶すぎる捜索現場」
最初はまだ「クマに喰われていなかった」!遺体の「第一発見者」が告白…秋田でクマに襲われ死亡した男性が明かしていた「恐怖」
日時:2024年5月15日-22日
場所:
秋田県鹿角市大湯発荷峠
青森県と秋田県の県境で十和田湖の南方に位置し、十和田八幡平国立公園に隣接する自然豊かで風光明媚な土地のようです。
内容:
2024年5月15日
2024年5月15日8:30頃、青森県在住の60代男性S氏がタケノコ(根曲り竹)を採りに、女性二人とタケノコが採れる現場へ向かいタケノコ採取を始める。
S氏の山菜仲間のA氏は同日6:00に同場所に山菜採り目的で入っていた。
なお、もう一人別の人物であるB氏もA氏よりも先に同場所で山菜採取をしていた。
15日の朝には同場所においてS氏と同行の女性2名、A氏、B氏と合計5名が同場所で山菜を採取していた。
9:00頃、A氏がS氏が使っているリュックサックを見つけ、S氏に声をかけた。
A氏「おーい」
S氏「おーい、いまいくすけー」とS氏から返事がかえってくる。
S氏「あちゃー」と次に声をだす。(このタイミングでクマと遭遇したのかもしれません)
その直後にA氏から15m先の笹薮がサーッと動く。(のちにA氏はこの動きがクマによる動きだったのではと考えた。)
その後、A氏からの声掛けにS氏は返事はしなかったが、A氏は気にせずに山菜を採り10:30頃に車のある場所まで戻った。
車まで戻るとS氏と同行していた女性がS氏が戻ってこないとA氏に告げた。
同行女性はA氏にS氏に声掛けしてくれないかと頼み、A氏も車で現場近くまで移動しょうと思ったものの、他の車(B氏の車か?)が林道をせき止めており現場近くまで車でアクセスできなかったため、そのまま帰宅した。
同行女性がその後S氏が山菜採りをしていた場所までいって「おーい」と声掛けしたが返事はなくS氏も戻ってこなかった。
2024年5月16日
9:00 A氏は翌日の16日9:00頃に再び山菜採りに同場所へ行った。
同場所で山の管理人からS氏が行方不明になったとその場で聞く。
A氏はS氏を心配し16日は山菜採りをせずに現場でS氏を待っていた。
なお、A氏以外の山菜採りの人物たちが先に山に入っている状況。人数は不明。
10:00 捜査本部が立ち上がったいた。警察官や消防隊員20名によるS氏捜索隊が結成。
ヘリコプターによる捜索も開始された。
A氏は現場の捜索メンバーへS氏のリュックサックがあった場所やルートについて伝えようとするも聞いて貰えなかったと語る。
A氏は捜索メンバーに加えられず。
15:00 捜索隊はS氏の居場所は確認できなった。捜索隊は翌日が雨天のため、S氏と同行した女性へ捜索内容について話していた。
なお、S氏の行方不明の原因がクマによるものか遭難なのか、この時点では判断が付かないため猟友会の参加は見送られたと考えられる。
また、猟友会の参加費は一人30000円/日とあるが、この費用を市が払うのか、県が払うのか、個人が払うのかは未確認。
2024年5月17日
7:00 A氏は現場へ行く。捜索隊は雨天のため14:00頃まで現場で待機し、雨が落ち着いた後に1時間程度捜索を開始。
17日もS氏を発見できなった。
18日以降の捜索は行方不明から72時間が経過していることから、その後の捜索が打ち切られた。
2024年5月18日
7:00 捜査本部による捜索が打ち切られたことで、山に入ることが可能になったためA氏と仲間のもう一人がS氏の捜索を開始。
現場にはすでに他の山菜採りの人物が入っていた。
その人物よると「草むらの向こうからウーウーッと声がする」とのこと。
A氏はすぐにクマであると認識。
仲間と慎重に近づくとS氏が倒れていることを確認。
頭から下半身まで枯れ葉がかけられていた。
「クマまんじゅう」、または「土饅頭」です。
クマは獲物を捉えると自分の獲物として土や枯れ葉などをかけて己のものとします。
こんもりと盛り上がった様から、「クマまんじゅう」とか「土饅頭」と呼ばれています。
S氏の膝は曲がり、顔にハエがたかり、死後硬直が始まっている状態。
しかし、まだクマに食べられた形跡はなかったとのこと。
A氏はS氏を確認後にすぐに電波が通じる所まで降り、警察へ連絡。
警察官2名とタンカをもった消防隊員が5-6名が現場へ向かう。
警察官と消防隊員はクマスプレーやナイフを装備。
警察官を先頭にして、A氏が道案内をしながらS氏がいる現場へ向かい到着。
笹を刈り払いながら進む一行。
現場に到着するとA氏はS氏のクマまんじゅうのすぐ近くにヒグマの寝床を発見。
A氏は警察官や消防隊員に「すぐ近くにクマがいる」と伝えた。
警察官や消防官はS氏に近づき、遺体を確認し撮影や落ちていた糞のサンプルなどをとり始める。
警察官がS氏に危険であるため警察官の近くに来るように促す。
が、S氏は警察官の近くクマの寝床があることから拒否して距離をとった。
消防隊員がタンカでS氏を運ぼうとしたその瞬間
警察官の後ろからガサガサと音がして中型のツキノワグマが突進
「クマだ クマだ」と誰かが叫ぶ
A氏ほかはすぐに車の方へ逃げた
A氏と消防隊員が命からがら車へ到着し逃げ延びた
しかし、警察官の二名だけが車に戻って来ない…
「助けてください…」と警察官のか細い声が聞こえたといいます
「無理無理」と消防隊員
しばしして、若い警察官が顔中血まみれで車にやってきて車にのり消防隊員の車に近づく
右の耳から顎にかけて割かれていた
「助けてください」と叫ぶとともに倒れて意識不明で倒れる
10分以上経過してからもう一人の警察官が体を引きづりながら車までやってきた
「腕があがらない 力が入らない」と話した
その後、警察官二名は救急車で病院へ運ばれた
2024年5月22日
重機で林道を拡幅し、22日にS氏の遺体を回収した。
最初に山菜採りが好きであったであろうS氏にご冥福をお祈り申し上げます。奥様も大変な思いをされていると思います。ご愁傷さまです。
次に、現場において職務に忠実であられた二名の警察官にご尊敬申し上げます。
以下、事件への雑感です。
・クマまんじゅうがある現場での警察官の行動(写真撮影や糞のサンプル回収など)が不適切
結果論ですが、S氏の遺体を確認できたらすぐに引き返すべきでした。また、警察官も行政マンですから事件現場における撮影やサンプル回収などは定形の業務だと思いますが、時と場所を考えて行動してほしいと思います。警察官の上司の方々も現場での通例として撮影やサンプル回収などは事件現場での定形業務として指導すると思いますが、人相手ではないことや現場がクマなどがいる山野である際は現場の臨機応変な対応を認めてほしいと思います。
・クマ襲撃の直接の原因は消防隊員によるS氏の遺体をタンカで運ぼうとしたことなのか
この記事を読むとツキノワグマが襲ってきたタイミングは消防隊員がS氏の遺体をタンカに載せて運ぼうとしたタイミングであると読み取れます。つまり、クマまんじゅうをそのままにしておいたならば、クマの襲撃はなかったのかもしれません。
現にクマまんじゅうを最初に発見したS氏はクマに襲わていません。
さらに、クマまんじゅう周辺で山菜採りをしていた方々も襲われていません。
クマまんじゅうに埋まっている人を見かけたらならば、襲撃直後であれば生きている可能もあります。
どうしたら良いのか。
ベストな対応は自分では助けずに、すぐに警察や猟友会へ助けを呼ぶことなのかなと思いました。
今後はクマまんじゅうを見かけたら、人であれ鹿であれ、すぐに引き返すことが肝要であることを再確認しました。
ただ、猟銃を持った状態で、実際に人が埋まっているクマまんじゅうを見かけて、その方に息があったら判断に迷うと思います。
ただ、基本はクマまんじゅうを見つけたらすぐに撤収するのがベストだとは思います。
・A氏の現場力が高い
この記事を通じてA氏の現場把握能力の高さを感じました。A氏によると、捜索隊20名が二日間かけて捜索して探せなかったS氏の遺体を18日に山に入れることになったや否や10分間でS氏の遺体を発見したと語っています。こういう現場力がある方は尊敬できます。
今後は警察官も消防隊員も現場に精通した方々の意見を最優先にして捜索にあたってほしいと感じました。
・タケノコ採りの方々の情熱がすごい
なによりもこの記事を通じて登場する青森県や秋田県の方々のタケノコ採りへの情熱を強く感じます。私も山菜は採るので気持ちは理解できますが、それにしてもタケノコ採りへの情熱が海を超えて北海道まで感じます。正直、共感できます。
私も先日、おじが採ってきたチシマザサのタケノコを湯がいてマヨネーズをつけていただきました。これがまた美味しい。ですので、タケノコ採りの方々の気持ちはよくわかります。タケノコの採りの皆様、安全第一で山菜採りを楽しんでください。
なお、北海道では消防隊員が仲間の隊員をナイフ一本でヒグマの襲撃から救った事例もありますので、お時間がございましたら以下の記事を参照ください。
関連記事:
2023北海道福島町大千軒岳ヒグマ大学生襲撃&消防隊員撃退事件概要
先週とれたヒグマの前足。
罠にかかっていたヒグマのオスです。
固く大きな爪が見えます。この爪で襲撃を受けるとどうしょうもないと思います。
クマの初撃は左手からが多いと聞きます。
仕方なくクマと対峙した時は右手で顔をガードしましょう。
しかし、一番肝要なのはクマに襲撃を受けるような行動を取らないことです。
「君子危うきに近寄らず」の精神でいきたいものです。
恐ろしい事件ではありましたが、そんなクマたちと人間たちが距離を保った共存関係を築くことを当ブログは目指しています。
そのために現場で汗をかきたいと思っています。
今後ともよろしくお願い申し上げます。
したっけぃ
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18日、A氏がS氏の遺体を発見し、警察に通報して、警官2名消防隊員5〜6名が現場に向かった際、猟師、猟友会員が同行しなかったのが、結果的に被害を招いたのでしょう。
猟師などの同行ができない時は、遺体回収時、熊が人に襲いかかる危険を予知し、警察も防護服、防護盾、銃火器携帯など重装備した機動隊員を護衛に配備する必要があると思います。
大袈裟かもしれませんが、自衛隊特殊部隊に出動要請も考えられます。
ところで、殺傷熊は捕獲されたのでしょうか。
熊による人身被害件数は、今年も秋田県が全国一位、十和田湖近辺では、以前も同時期多数の死傷被害(死者4名)がありましたが、凶暴な熊の棲息地域なのでしょうか。
ミウル様、コメントありがとうございます。
おっしゃる通りS氏遺体の確認の際に経験ある猟師が仕切って、警察官と消防隊員が猟師の指示にしっかりと従えば結果は違ったかもしれません。
5/18は土曜日でしたので猟師も集まりやすかったかもしれません。
ただ、猟師も仕事や用事があるので、土曜日であっても警察や自治体から連絡があってもそれほどすぐには現直はしにくいです。
写真のヒグマは捕獲しました。すでに解体済です。美味しいです。
秋田のクマ被害が非常に多いので驚いています。秋田の方々がクマとの付き合い方や距離感を学んでいる最中なのかなとは感じています。