2023-08-09 No.1022
どうも、北海道十勝のハンターモーリーです。
宮崎駿監督作品『君たちはどう生きるか』を観てきました。
ちまたではあまり評判は良くないようです。
私自身も娯楽作品、エンターテインメント作品としてはいまいちだと感じます。
ただ、『君たちはどう生きるか』は大切な作品になりました。
なぜならば、『君たちはどう生きるか』は宮崎駿監督から私たちへの遺言だからです。
映画を観終わって、少ししてから気付きました。
「あれは遺言だ。宮崎監督から私たちへの遺言なんだ。」と。
遺言であると気づいてしまうと、涙がこぼれてきます。
遺言に面白いも面白くないもありません。
遺言はただ大切に受け取るものです。
私はハンターになる前はアニメーターでした。
宮崎駿監督の作品にもアニメーターとして参加しています。
その私が宮崎さんの最後の作品『君たちはどう生きるか』について思うところをしたためます。
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2013年公開の『風立ちぬ』以来10年振りとなる作品です。
スタジオジブリとしても2014年公開『思い出のマーニー』以来9年振りの長編アニメです。
なお、2016年に『レッドタートル ある島の物語』マイケル・デュドク・ドゥ・ヴィット監督(オランダ)のアニメーション作品をジブリ作品として公開しています。
素朴な作品です。
この監督の作品は素朴で素晴らしいアニメーション作品なのですが、わかりやすいエンターテインメント性は乏しいのであまり話題にならない監督です。
それでもヴィット監督の『岸辺の二人』などの作品はご覧いただきたいと思います。
余談ですが…
私は会社員の傍ら昔のアニメーション作品を地元の映画館で上映していたことがあります。
押井守監督の『うる星やつら ビューティフルドリーマー』(1984年)のフィルムを東宝から借りて地元映画館で上映しました。
その『うる星やつら』の後に、このヴィット監督の『岸辺の二人』(2001年)という作品を地元で上映しようと一時期動いていましたが、権利を持っていた東芝EMIと調整できず断念したことがあります。
話は戻ります。
『君たちはどう生きるか』は2つの作品から大きく影響を受けているとされています。
・「君たちはどう生きるか」吉野源三郎
・”The Book of Lost Things” Jonn Conolly 【失われたものたちの本】ジョン・コナリー著
上記の二冊です。
醜い己を克服する姿勢を吉野源三郎氏から得、物語の流れはジョン・コナリー氏から得て、宮崎監督が最高のアニメーターたちに頼って作り上げました。
宮崎さんももう82歳(2023年)です。
年を取ると集中力と粘りがなくなり仕事の質が落ちます。
特に絵を描く仕事は老眼で自分の描いた絵が見にくくなります。
また、絵を描くことは体力的にも精神的にも非常に消耗する作業です。
82歳になった宮崎さんにとって絵を長時間描き続けることは困難です。
『君たちはどう生きるか』を観ていてカット毎の統一感がバラバラな印象を受けましたが、宮崎さんが演出家としてあまりペン入れをしていないのだと聞きました。
さもありなんと思うと共に、よく長編作品を監督として公開までこぎ着けたと思います。
この作品は決して面白い娯楽映画ではありません。
しかし、参加しているアニメーターたちは極上な方々なのでワンカットワンカット、とにかく作画と構図は素晴らしく美しい作品です。
映画ではなくアニメーション絵画として見るだけでもオススメできます。
ただ、映画を観終わった直後は映画作品としてはピンとこず、各カット毎の統一感もなく美しいカットがただ散在している作品という印象でした。
それでも、振り返ると宮崎さんがなにか大切なことを伝えようとしていることも感ぜられる、そんな印象が残った作品でした。
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「あの映画は遺言だ。
ジブリ作品を愛してきた私たちへの遺言だ。」
宮崎さんが
「俺(宮崎監督)は色々と作ってきた。
もう作品作りは無理っぽい。
あとはみんなで勝手につくれ。
それでも俺が大切にしてきたものは尊重して欲しい。
次代のジブリ監督はゴローだ。」
そう言っているのだと理解しました。
その瞬間涙がボロボロ出て来て、しばらく泣き止みませんでした。
内容が面白いとか面白くないとか関係ありません。
宮崎さんが私たちへの遺言なのですから大切な作品なのです。
※ゴロー:宮崎駿監督の息子の宮崎吾郎氏。「ゲド戦記」や「コクリコ坂から」などの監督を務めつつ、ジブリ関連施設の設計なども行う。建設コンサルタント畑からアニメーション業界に転職した。映画の登場人物(おそらく宮崎駿監督の分身)がゴローに任せると語るシーンがあったように解釈しました。
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映画『君たちはどう生きるか』は製作委員会方式をとりませんでした。
製作委員会方式とアニメーション制作にあたり共同で出資するスポンサー団体の集合体です。
製作委員会方式はお金を集めやすいメリットがあります。
一方でスポンサーの意見が作品に反映され、監督やプロデューサーの意図に反する内容になる、制作現場に資金が回らない等のデメリットがあります。
製作現場にとっては最悪のシステムだと思っています。
アニメ作品の歌で作品と合わないアーティストや曲が使用されるケースが散見されます。
あれはこの製作委員会方式のスポンサーによるゴリ押しが原因です。
『君たちはどう生きるか』はジブリが単独で出資して広告なども一切打っていないため、製作費が主な経費となり、広告費などは不要となります。
スポンサー等もいないため、宮崎監督は作品内容に対し自由な裁量を与えられたと言えます。
その意味で、今回の作品は楽しみにしていました。
「宮崎監督が完全自由な裁量で作品を作れる」と。
しかし、違いました。
この作品は遺言です。
遺言にスポンサードする企業はありません。
遺言とは完全に個人的なものだからです。
なぜ、今回は資金を集めやすい製作委員会方式を取らなかったのか。
それは、宮崎さんから私たちへの遺言だったからだと理解しています。
参考サイト:
アニメとビジネスと私 アニメ製作委員会方式のメリットとデメリット
参考動画:岡田斗司夫氏がアニメーション製作委員会方式のデメリットについて語っています。
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宮崎さんはいつどうなっても良い様に、先に遺言である『君たちはどう生きるか』を作って公開しておこうと思ったのでしょう。
で、次回の宮崎駿監督の作品は『シュナの旅』を希望しています。
種を求めて旅をする少年と奴隷にされた姉妹が出会う話です。
シュナの旅の映画化、楽しみですね。
なお、この作品は地味すぎて映画にはならないだろうとのことで1983年に漫画形式で発表されました。
1983年と言えばアニメージュで風の谷のナウシカの漫画連載が前年の1982年に始まり、翌年1984年に風の谷のナウシカの劇場公開と超多忙な頃の作品です。
天才は多産であるとの良い事例ですね。
宮崎さんの作品を映画館で観る機会はもうあまりないと思います。
貴方も『君たちはどう生きるか』を映画館でご覧ください。
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したっけぃ